第21話 近衛兵厩舎の再会と水花火
「さて、近衛兵厩舎に行くか」
久しぶりに足を運ぶ近衛兵厩舎。
皆は元気にしているだろうかと、期待と懐かしさが入り混じった気持ちになる。
厩舎に入ると、近衛兵副隊長のエドガーが出迎えてくれた。
「おお、バンダナか! 久しぶりじゃないか。見違えるように逞しくなったな。チェルシーの訓練、辛かっただろう」
彼の朗らかな声に思わず笑い返す。
「ああ、辛かったぞ! でも、無事に終えられたよ」
「そうだよな。よく生きていたな……。そうだ、皆も会いたがっていたぞ。今、訓練場にいるから顔を出してくれ」
二人で雑談しながら訓練場へ向かっていると、突然、爆発音が訓練場に響き渡った。
「ドォーーーン!」
「訓練場の方だ! バンダナ、急げ!」
エドガーと一緒に急いで訓練場へ駆けつけると、そこには何人もの兵士が血を流し倒れていた。
「エ、エドガーか……急いで、あるだけのメガポーションを持ってきてくれ!」
負傷者の一人であるカナベルが苦しそうに声を絞り出す。
その右腕は明らかに骨折しているようだ。
「カナベル、わかった!」
エドガーが救護室へ向かおうとするが、それを俺は手で制した。
「エドガー、待って。俺に任せろ」
「任せるって、これだけの怪我人をどうする気だ!? ポーションじゃ時間がかかりすぎる!」
エドガーの言葉を無視し、俺は息を整え、両手を広げて静かに呪文を唱え始めた。
「『メガ・エリアヒール』!」
辺りに柔らかい癒しの光が広がり、負傷者たちの傷がみるみる回復していく。
彼らの苦しそうな顔が和らぎ、カナベルの骨折も音を立てて治っていった。
「バ、バンダナ、これは……?」
驚くエドガーに、俺は答える。
「広範囲回復魔法だ。これなら時間もメガポーションも要らない」
訓練場の静寂を破るように、回復した兵士たちの感謝の声が次々と上がる。
エドガーはそんな光景を見ながら、感心したように大きく頷いた。
「バンダナ……お前、ただ者じゃないな。本当に見違えたよ」
そう言いながら、彼は嬉しそうに俺の肩を叩いた。
兵士たちがゆっくりと立ち上がると、まだ地面に横になっていたカナベルが突然叫んだ。
「もう一個、水花火がある! あと少しで爆発するぞ! みんな、離れろ!」
カナベルの近くを見ると、20センチほどの球体が点滅しながら光を放っているのが目に入った。
水花火の危険性は、以前チェルシーから聞いて知っている。
水の魔石を核にしたこの装置は、破壊的な爆発を引き起こすが、爆発前に魔石の核を破壊すれば防ぐことができるという。
「やるしかない……! 『魔法剣・サンダー』!」
剣に雷の魔法を纏わせ、俺はカナベルに向かって叫んだ。
「カナベル! 水花火を上に投げろ!」
カナベルは横たわったまま、必死の力で水花火を上に放り投げる。
その瞬間、俺は足を踏み込んで剣を振り抜いた。
「『疾風斬』」
剣が放つ閃光と共に、水花火は正確に真っ二つに斬られ、核となっていた魔石が力を失う。
地面に転がる残骸を見て、兵士たちは歓声を上げた。
背後からカナベルの声が聞こえる。
「凄いな……誰だか知らないが……助かった!」
振り返りながら、俺は手を差し伸べた。
「久しぶりだな、カナベル」
カナベルは俺の顔を見て驚き、すぐに笑顔になった。
「バンダナ! やっぱりお前か!」
俺の手を掴みながら立ち上がると、彼は軽く肩を叩いて言った。
「本当に助かったよ。礼を言いたい。向こうの部屋で一息つこう。エドガー、悪いが後片付けは頼む」
エドガーは苦笑いしながら頷き、兵士たちに片付けの指示を出し始めた。
俺たちは訓練場を後にし、カナベルと共に少し静かな場所へ向かった。
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