第20話 強くなった証――新たなスキルとCランク昇格
夕食後、満腹感に浸りながら、ふと思い立って久しぶりにステータスを確認してみた。
「『ステータスオープン』」
視界に浮かび上がった情報を眺めると、見覚えのないスキルが追加されているのが目に留まる。
「『多重魔法』……? それに、魔法剣が『属性魔法剣』になっている」
新たなスキルの名前に驚きつつ、さらに下を見ていくと、レベルも確認する。
「レベル43か……随分上がったな」
キング・ウォータースライムとの戦いや、その後のダンジョン探索の成果だろう。それにしても、スキルの成長ぶりには驚かされる。
自分が一歩ずつ確実に強くなっているのを実感し、自然と微笑みがこぼれた。
しかし、気が抜けたせいか、急に眠気が押し寄せてくる。思えば、女将特製の料理を堪能したのも久しぶりだ。あまりの美味しさに体も心もほぐれたのだろう。
「なんだか、眠くなってきた……」
心地よい疲労と満腹感に包まれ、ベッドに倒れ込むと、すぐに眠りへと落ちた。
翌朝、ギルドに足を踏み入れると、チェルシーと屈強そうな男が一緒に席についているのが目に入った。
チェルシーが手を振りながら呼びかける。
「バンダナ、こっちこっち!」
席に近づき、促されるままに座る。チェルシーが男を指差して紹介した。
「バンダナ、この男は冒険者ギルド長のガッサムさ」
挨拶を交わすと、ガッサムがじっくりとこちらを見て口を開いた。
「ところでチェルシー、以前見た時と比べると、ずいぶんと体格も変わったし、表情に自信があるようだな。何かあったのか?」
チェルシーが得意げに肩をすくめながら答える。
「だから言ってるじゃないか。このバンダナが、ひとりでキング・ウォータースライムを討伐したんだよ。それも証拠がある。ほら、雷の魔晶石が二つだ。あんただって、この魔晶石がどれだけ貴重か知ってるだろ? 商業ギルドを通さなきゃ手に入らない代物だよ」
ガッサムが眉間にシワを寄せて考え込む。
「確かに、この雷の魔晶石が討伐の証拠だということはわかる。だが、Eランク冒険者が数か月の間に飛び級でCランクになるというのは、滅多に例がない」
チェルシーが勢いよくテーブルを叩いて反論する。
「事例がない? なら、新しく作ればいいじゃないか! あんた、ギルド長のくせに煮え切らない男だね。さっさと決めちゃいな!」
ガッサムは静かに俺の目を見つめる。視線が鋭く、試されているように感じたが、こちらも負けじと視線を返す。
「……いい目をしている。よし、わかった。君をCランクに昇格させよう」
チェルシーが満足そうに頷き、俺の背中を軽く叩く。
「いいじゃないかい! バンダナ、さっさと受付でCランク登録と、魔晶石の売却金を受け取ってきな!」
意気揚々と受付に向かうと、これまでの苦労が報われた気がして、自然と笑みがこぼれた。
受付に向かうと、カトリーナが満面の笑みで迎えてくれた。
「おめでとうございます、バンダナさん! 昨日、チェルシーさんからいろいろ聞いていましたけど、まさか飛び級でCランクに昇格されるなんて、本当にすごいです!」
彼女の明るい声に、こちらも自然と頭を下げる。
「ありがとう」
ギルドカードを差し出すと、カトリーナはそれを手に取り、奥の部屋へと消えていった。
しばらく待つと、彼女が新しいカードを持って戻ってきた。
「お待たせしました。こちらがCランクのギルドカードです。それと、魔晶石の売却金ですが……白銀貨四枚分となりましたので、ギルド金庫に登録させていただきました」
その金額に思わず声が漏れる。
「えっ……白銀貨四枚って……」
雷の魔晶石が一個で二千万円だったことを考えると、まさかの額だ。
自分でも驚きが顔に出ているのがわかる。
カトリーナはくすりと笑いながら説明を続ける。
「驚きますよね。でも、あの魔晶石は本当に品質が良くて高額で売却できたんです。冒険者ギルドとしても大助かりです。ただ、あまり無駄遣いはしないように気を付けてくださいね」
「そ、そうだね……気を付けるよ」
答えながらも、内心はまだ動揺が収まらない。
そんな様子を見ていたチェルシーが、向こうの席で大笑いして机を叩いているのが目に入る。
「バンダナ、どうだい、あたしの依頼は? 結構、ためになったし、稼げただろ?」
照れくさくなりながらも、俺は頷く。
「そうだね。チェルシーのおかげだよ。ありがとう」
「なんだい、改まっちゃって。照れるじゃないか」
チェルシーは照れ隠しに笑いながら肩をすくめる。
「でも、あたいも助かったよ。水の魔石と魔晶石がちゃんと集まったし、暇つぶしにもなったからね」
彼女と固く握手を交わす。
「ところでさ、チェルシーはどこに住んでいるんだ? 今度、顔を見に行きたいから教えてくれよ」
俺の言葉にチェルシーは少しだけ目を細め、笑って首を横に振る。
「嬉しいこと言ってくれるじゃない。でもね、知らない方がいいってこともあるのさ」
その答えに少し寂しさを覚えつつも、俺は頷いた。
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