第17話 キング登場
数日が経過し、最初はウォータースライムのドロップ率が良かったものの、今では必要数の半分にも満たない。さらに、スライムの再出現がだんだんと遅くなり、効率が悪化していた。
「待ち時間が多くて、効率が悪いなぁ」
そうぼやいていると、池の中からいつもと異なる気配を感じた。
突然、池から巨大なスライムが姿を現す。その体積は通常のウォータースライムの三倍以上だ。
「うおっ! 鑑定……『キング・ウォータースライム』だ」
威圧感たっぷりのその巨体を前に、一瞬息を呑む。しかし、すぐに魔法を発動。
「『サンダーストーム』」
雷鳴が響き、雷撃がキング・ウォータースライムに直撃する。スライムの体が一瞬プルプルと震えたものの、直後には体勢を立て直し、鋭い触手を振り回して襲いかかってきた。
「くっ、早い!」
剣で何とか触手をさばくが、スピードとパワーに圧倒され、膠着状態に陥る。魔法を詠唱する隙もなく、次第に追い詰められていく。
「このままじゃやられる……一旦退くしかない」
そう思った矢先、触手が予想以上の速度で伸び、右肩を直撃した。
「ぐぁっ!」
肩に激痛が走り、後方に吹き飛ばされる。地面に叩きつけられながら、すぐにスライムの方を振り返ると、幸いにも池からは出られない様子で追撃してこなかった。
「助かったか……」
ふと、自分が持っていた剣を探すと、それはスライムのすぐ近くに落ちている。到底、回収に向かえる状況ではない。スライムはこちらを威圧するように胸を張り、まるで「どうした、かかってこい」と挑発しているかのように見えた。
「とりあえず、治療だ」
魔法を唱え、右肩の治療を行う。
「『ヒール』」
暖かな光が肩を包み込み、傷が塞がっていく。幸いにも、傷は浅かったようだ。
「さて、どうする……」
剣がなく、触手の攻撃を防ぐ手段がない。さらに、スライムまでの距離が遠すぎて、効果的に攻撃が届かない。このままでは手詰まりだ。
そんな状況の中、チェルシーの言葉が頭をよぎった。
(今教えているのは初級魔法だけど、魔法には威力によって段階があるんだ。初級、中級のメガ級、上級のギガ級、最上級のテラ級。それから、究極魔法のオメガ級。皆がすべての魔法を発動できるわけじゃないけど、発動できるかは才能だね)
その時は深く考えなかったが、今の状況では中級のメガ級魔法を使うしかない。それなら、射程も長く、威力も十分だろう。
「でも、本当にできるだろうか……訓練と違い、チェルシーに頼ることはできない……」
心配していても、あのスライムは倒せない。今こそ、自分の殻を破り、この世界で生き抜く術を学ばなければ。
「やるしかない」
触手との距離と魔法の射程を考え、慎重に近づいて魔法を唱える。
「『メガサンダーストーム』!」
激しい轟音と共に、雷撃がスライムに落ちる。
スライムは激しく身を悶えたが、しばらくすると体勢を整える。しかし、前より明らかに形状が崩れていることがわかる。
「効いている! いくぜ、『ものまね・メガサンダーストーム』!」
数発繰り返し連続して魔法を放つと、スライムは上下左右に激しく痙攣し、ついに崩れ落ちた。
「やったぜ……キング・ウォータースライムを倒した!」
倒したスライムがいた場所には、輝く剣と大きな魔晶石が落ちていた。
もしよろしければブックマークへの登録、応援をよろしくお願いします。
応援は下にある『☆☆☆☆☆』より押すことで可能です。
ブックマークも頂けると本当に嬉しいです。
作者のモチベーションになりますのでよろしくお願いします。