第16話 ウォータースライム狩り
地下四階へ続く階段の前で、監視員に呼び止められる。
「待て。地下四階からはDランク相当の魔獣が相手になる。この階層には監視員はいない。すべて自己責任だ。心してかかれよ」
「わかった」
監視員の忠告に軽く頷き、階段を降りていく。スキル『地図捜索』で確認すると、少し先に複数の赤い点が表示された。
さらに『鑑定』で詳細を確認する。
「ゴブリンソルジャーが二体、さらにゴブリンマジシャンか」
これまでの階層とは明らかに違う手応えを感じる相手だが、冷静に対処すべく剣を構える。物音に気づいたゴブリンソルジャーが剣を振りかざしながら突進してきた。
「カナベルの剣さばきに比べれば、まだまだだ」
「『疾風斬』」
風を巻き起こすような勢いで剣を振るい、一瞬ですれ違いざまにゴブリンソルジャー二体を切り捨てた。その瞬間、ゴブリンマジシャンが詠唱を終え、『ファイアボール』を放ってくる。赤く輝く火の玉が迫りくるのを目にしたが、冷静に対処する。
「『魔法剣』」
剣に魔素を纏わせ、一刀で『ファイアボール』を真っ二つに切る。火の玉の破片は消え、目の前のゴブリンマジシャンは驚愕した表情を浮かべていた。その隙を逃さず、ゴブリンマジシャンに突進して剣を振り下ろす。
敵は断末魔を上げながら倒れ込んだ。
一連の動きを見ていた近くの冒険者パーティーが驚いた様子でこちらを見つめている。
「三体同時でもいけたな。チェルシーとの訓練が本当に効果的だったな」
内心でそう呟きながらも、周囲の視線を意識して呟く。
「あまり目立たないようにしないとな」
再び『地図捜索』を発動させ、慎重に進んでいく。地下四階の探索を終え、次の階層に通じる階段が見えてきた。
「いよいよ地下五階か」
地図に記された印を頼りに進むが、目の前には厚い壁が立ちはだかっていた。
「行き止まりか……」
おかしいな、と壁に寄りかかろうとした瞬間――
「うわっ!」
体が壁をすり抜け、思わず奥へと転げ込んでしまった。驚きつつも周囲を見回すと、静かな池が広がっており、中央にはゼリー状の魔獣がゆらゆらと揺れている。
「『鑑定』……なるほど、あれがウォータースライムか」
チェルシーの言葉が脳裏に浮かぶ。
(ここからが重要だよ、よく聞きな。ウォータースライムには物理耐性がある。それに、魔法も効きにくい。そこでだ、弱点属性の雷魔法を使いな。奴らは集団で襲ってくるから、一丁景気の良い『サンダーストーム』がいいね。派手にかましてやりな)
「わかった。雷魔法か……やってみよう」
池の近くに足を踏み入れた瞬間、水面が波打ち始め、次々とスライムが姿を現す。大小さまざまなウォータースライムが一斉にこちらに向かってくる。
「これがチェルシーの言っていた集団戦か……さあ、行くぞ!」
両手を掲げ、雷魔法の詠唱を始める。魔素が集中し、空間に雷のエネルギーが集まっていく。
「『サンダーストーム』」
轟音と共に無数の雷がスライムたちに降り注ぎ、水の体をビリビリと痙攣させる。
スライムは液状となり、地面に吸い込まれるように消え去る。そして残ったのは輝く水の魔石だ。
「よし、まずは二個ゲットだ」
魔石を拾い上げ、周囲を警戒していると、再び池の中からスライムたちが湧き上がる。
「ここで、ものまねだな……『ものまね・サンダーストーム』」
ものまねを使い、再び雷を呼び寄せる。チェルシーの言葉を思い出す。
(池に近寄らなければ襲ってこない。魔素が尽きそうになったら休むんだよ)
だが、ものまねなら魔素を消費せずに魔法を再現できるから、休む必要もない。
「これなら、無限に戦える!」
雷を操りながら次々とウォータースライムを撃退し、魔石や魔晶石を回収していく。
「この調子なら目標数もすぐに集まりそうだ」
静かな池に雷鳴を響かせ、ウォータースライムたちは次々と地面に吸い込まれていった。
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