第15話 初めてのダンジョン
チェルシーの指示通りに馬車に乗り、ダンジョンへ向かうと、お昼前には到着した。
着いた場所は、小さな集落。
見渡す限りの穏やかな風景に、拍子抜けしてしまう。
「ここがダンジョン?」
ダンジョンの入口らしきものは見当たらない。
少し不思議に思い、近くにいた冒険者に声をかける。
「すみません。この辺りにダンジョンがあると聞いたのですが……」
その冒険者は俺を見上げてから答える。
「この集落の奥にダンジョンがある。お前、初めてか? ランクは?」
「Eランクだ」
「初心者だな。なら、あそこに見える建物が受付所だ。まあ、頑張れよ」
冒険者に礼を言い、教えられた建物へ向かう。
建物の中に入ると、数人の冒険者が並んでいた。
順番を待ち、受付カウンターで女性に話しかける。
「えーと、ダンジョンに入りたいのですが……」
「わかりました。このダンジョンは初めてですか?」
「そうです」
「では、大銀貨1枚をお願いします。それから、奥でダンジョン内のルールや各層の説明を聞いてください」
言われた通り、大銀貨1枚を差し出すと、簡易地図が手渡された。
奥の部屋に案内され、説明が始まる。
このダンジョンは初心者向けだが、油断は禁物。
冒険者ギルドの管理下にあり、各層には監視員が配置されているため、命の危険は少ない。
ただし、魔獣の出現場所や危険地帯もあるため、地図を活用することが重要だという。
「なるほど。初心者向けとはいえ、本物のダンジョンか……」
説明が終わり、装備を確認してダンジョン入口へ向かう。
「さて、初めてのダンジョンだな。どこから攻めるか……」
地図を見つつ歩き出したところで、ふと思い出す。
「そうだ、『地図捜索』のスキルがあったな」
スキルを発動すると、頭の中に透明な地図が現れる。
公式の地図よりも詳細で、地形や魔獣の位置を示す赤い点まで確認できた。
「おお、これなら探索が楽になるぞ!」
意気込んで歩き出し、入口に立つ監視員に軽く会釈をして、鍾乳洞の奥へと進む。
天井から垂れ下がる鍾乳石や、冷たい空気が独特の緊張感を生む。
「よし、行くか」
ダンジョン内を進むと、さっそく魔獣が姿を現した。
『鑑定』
目の前に現れたのは――
『ホーンラビット』
ウサギに似た姿だが、額には鋭い角があり、体格も普通のウサギよりはるかに大きい。
「突進してくるか……」
ホーンラビットは角を突き出し、一直線にこちらへ突進してくる。
「遅い」
落ち着いて横へステップしながら剣を振ると、一撃で仕留めることができた。
「チェルシーとの訓練のときに比べれば、速さも威力も全然足りないな」
反射魔法で鍛えた集中力と動体視力のおかげで、初戦闘でも余裕を持って対応できた。
倒れたホーンラビットの体は地面に吸い込まれるように消え、そこに角が残った。
「これがドロップアイテムか……ゲームでよく見るけど、実際に体験すると、なんだか不思議な感じだな」
角を拾い、空間収納にしまうと、再び奥へ進む。
チェルシーから受け取った地図によると、目的地は地下5階。
『地図捜索』 のスキルで周囲の地形と魔獣の位置を把握しながら、次々と魔獣を倒しつつ進んでいく。
ホーンラビット、キラーバット、ウルフなどの初級魔獣が現れるが、鍛えられた剣技と魔法で対処は容易だった。
地下3階に到達すると、次の階層への降り口付近に広場が見えてきた。
そこは『セーフティエリア』と呼ばれる安全地帯で、魔獣が出現しない場所だ。
周囲には冒険者たちがテントを設営し、食事を取ったり、傷を癒したりしている。
「なるほど。こうやって中で休息を取るのか……少し眠いな」
しばらく進む前に、俺もここで少し休憩を取ることにした。
携帯食を取り出して軽く腹を満たし、周囲の様子を観察する。
冒険者たちは談笑したり装備を整えたりしている。
中には魔石や素材を売買している者もいるようだ。
「地下4階に行く前に、準備を整えよう」
ひと眠り終え、装備を確認しながら心を落ち着け、次の階層への階段へと向かった。
もしよろしければブックマークへの登録、応援をよろしくお願いします。
応援は下にある『☆☆☆☆☆』より押すことで可能です。
ブックマークも頂けると本当に嬉しいです。
作者のモチベーションになりますのでよろしくお願いします。