第14話 ものまね士の力
ジョブ:『ものまね士』
ものまねすることで、あらゆる動きや技を模倣できる。
しかも、それによる体力や魔素の消費がない。
さらに、ものまねを繰り返すことで自分のものにできる。
「これだ! この『ものまねを繰り返すことで自分のものにできる』という特性のおかげで、スキルが増えたんだ!」
訓練中、自分では意識していなかったが、体力や魔素を温存するために、一度魔法を放った後、無意識に自分の動きをものまねしていた。
きっとそれがスキルの獲得につながったのだろう。
「こんなことがあるなんて……!」
改めて慎重にスキルを確認し、念のためすべてのスキルを隠蔽する設定に変更する。
「これ以上目立つわけにはいかない。とにかく、慎重に進めないと……」
ジョブ『ものまね士』の力を実感しながら、俺はスキル一覧を閉じた。
翌朝、ギルドへ向かうと、珍しくチェルシーが先に来ていた。
普段は遅刻してくることが多い彼女が早く来ている――どう考えても、良い兆候ではない。
胸に嫌な予感を抱えつつ、俺は挨拶をした。
「お、おはよう」
「なんだい、朝からそんな湿気た顔して。まぁ、いいさ。そこに座りな」
促されるまま、席に腰を下ろす。
「さて、訓練は終わったね。それでだ、持ちつ持たれつって言葉、バンダナにはわかるだろう?」
「はぁ……?」
突然の話に首をかしげるが、チェルシーは構わず続けた。
「いいかい、よく聞きな。この街の東にD級ダンジョン 初光の鍾乳洞がある。そこにウォータースライムがいてね、そいつらを倒して――
・水の魔石を20個
・水の魔晶石を2個
これを取ってきてほしいんだよ」
淡々と言われた内容に、俺は目を丸くした。
「ちょっと待って、いきなりそんな――」
言いかけたところで、チェルシーが手を振り、俺の言葉を制する。
「なに、バンダナの実力ならできるさ。時間はかかるかもしれないけどね。ほら、これ」
そう言って、彼女は印の付いた地図と、袋に詰められたキャンプ道具を押し付けてくる。
「これを背負いバッグに入れて持っていきな。それと、転移石も渡しておくよ。ピンチの時に使いな」
最後に手渡されたのは、手のひらサイズの石。
緊急時に街へ戻れる便利な道具らしい。
「えっと……具体的にどれくらい危険なのかとか――」
再び質問しようとするが、チェルシーはニヤリと笑い、俺の肩を叩いて立ち上がらせる。
「ほらほら、若者は考えるより動くもんだよ。行っておいで!」
背中を押される形で、準備もそこそこにダンジョンへ向かうことになった。
初めての本格的なダンジョン探索。
果たして無事に戻れるのか――期待と不安が入り混じったまま、俺は冒険への一歩を踏み出した。
もしよろしければブックマークへの登録、応援をよろしくお願いします。
応援は下にある『☆☆☆☆☆』より押すことで可能です。
ブックマークも頂けると本当に嬉しいです。
作者のモチベーションになりますのでよろしくお願いします。