第13話 驚きのスキル
「さぁ、今日から回復魔法を覚えていくよ」
「待っていました!」
思わず声が弾む。
これまで攻撃魔法や支援魔法を学んできたが、回復魔法はいつ教えてもらえるのか気になっていた。戦闘中に自分や仲間の傷を癒す力は、冒険者にとって欠かせないスキルだからだ。
チェルシーはそんな俺の期待を見透かしたかのように、口元に不敵な笑みを浮かべる。
「飴と鞭、この言葉の意味はわかるだろう。さて、これからが鞭の時間さ」
「おいおい」
不穏な響きに、思わず顔が強張る。
「まぁまぁ、安心しな。鞭で打つわけじゃないから。ほら、剣を構えてそこに立ちな」
言われた通りに剣を構えて所定の位置に立つと、チェルシーは異空間から新しい的を取り出し、少し離れた場所に置いた。
「距離はこれくらいでいいかねぇ。じゃあ、簡単に説明するよ」
「これからバンダナは、あの的に向かって魔法を放つんだ。魔法は的に当たると反射して戻ってくる。それを剣で切る。そして、剣で魔法を切っても多少のダメージは受けるから、そのダメージを回復魔法で治す。それだけさ」
「魔法を剣で切るのか?」
「あぁ、忘れてたねぇ。魔法を放つように、剣にも魔素をまとわすイメージをするんだ。ただし、これがなかなか難しい」
「やってみるよ。イメージは得意だ」
俺は意を決して剣を構え、的に向けて魔法を放った。
「『ファイアボール』!」
放たれた火の玉は的に命中し、一瞬静止したかと思うと、跳ね返ってこちらに向かってきた。
「『魔法剣』!」
剣に魔素をまとわせるイメージをしながら振り下ろし、『ファイアボール』を切る。だが、完全には切り裂けず、破片が肩に当たって火傷を負った。
「熱っ!」
思わず声を上げ、慌てて両手で火を払い落とす。
「バンダナ、イメージだよ。回復魔法を!」
チェルシーの声で我に返る。
深呼吸をして気持ちを落ち着け、火傷が癒える様子を頭に描いた。そして、静かに呟く。
「『ヒール』」
優しい光が体を包み込み、火傷が見る見るうちに治っていく。
「やった…治った!」
俺は自分の腕を見て、治癒の効果に驚きと達成感を覚えた。
チェルシーは満足げに頷く。
何度も攻撃魔法、魔法剣、回復魔法を繰り返すうちに、初めての頃に感じていた恐怖心はいつの間にか消え、代わりに純粋な楽しさが芽生えてきた。
「教えていない魔法剣に、回復魔法…お前さん、あたいよりよっぽどヤバいヤツだね…」
チェルシーが呆れたような顔でポツリと呟いた。
「そうか? でも、この試練を超えれば、もっと強くなれるのだろう?」
意気揚々と答えると、彼女は深くため息をついた。
「いや、あたいが言いたいのはそういうことじゃなくて……まぁいいか。バンダナが楽しいならね」
その後、様々な魔法で試し続けていくうちに、魔法属性には相性があることを改めて実感する。
例えば、火には水、風には土など、反属性の魔法が自然と唱えやすい。最初は理屈だけで理解していたが、体が次第に勝手に反応するようになっていった。
そんな自分の様子を見ていたチェルシーは、とうとう諦めたように肩をすくめた。
「異世界人っていうのは、どうしてこうなんだろうねぇ。呆れるよ」
「バンダナ、これで訓練は終わりだよ。今日は宿屋に帰って、早めに休みな」
彼女の言葉に従い、宿屋に戻ると、ふと思い立って最近確認していなかったステータスを開いた。
「なっ!」
画面に表示されたスキルの多さに、思わず声を上げてしまった。
「『全属性魔法』、『攻撃魔法』、『支援魔法』、『回復魔法』、『魔素感知』、『魔素制御』、『魔法剣』、『身体強化』……それに、戦技として『疾風斬』と『真空斬』まで!」
次々と羅列されるスキルを確認しているうち、目に止まったのはジョブ欄に『ものまね士』という文字が光っていることだった。
恐る恐る詳細を確認すると、そこにはこう書かれていた。
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