第100話 新たな冒険に向けて
旅立ちの準備をしていると、国王が静かに歩み寄ってきた。
「バンダナ殿、これを持っていかれるがよい」
そう言って、国王は小さな袋と一枚のメダルを差し出す。
「この袋には白銀貨が三十枚入っている。そしてこのメダルには、王家の紋章が刻まれておる。これを持つ者は、王家の客人と見なされる。いざという時、王家が後ろ盾になっている証となるだろう。旅の助けになるはずだ」
俺は静かにそれを受け取り、一礼した。
「ありがたく頂戴します」
国王が満足げに頷くと、控えていたチェルシーとユリアスがそばへと歩み寄ってきた。
「これから、お前さんはどうするつもりだい?」
「そうだな……。ひとまず、グラングラリオンに戻って、これからのことを考えるさ」
「そうかい。あたいは後始末があるから、しばらくはここに缶詰めさ。……まあ、なんだい。気をつけて行きなよ」
チェルシーと軽く拳を合わせる。
その隣で、ユリアスが微笑みながら口を開いた。
「初めてお会いした時のことを、今でもはっきりと覚えています。馬車の中で体が動かず、不安でたまらなかった……。『誰か助けて』と心の中で叫んだその時、バンダナ様が現れ、私たちを救ってくださいました」
ユリアスの瞳が、柔らかな光を宿す。
「あの時、私は思いました。いつかこの方と……」
俺はユリアスの目を見つめたまま、静かに耳を傾ける。
「再びお会いできた時は、本当に嬉しくて……。何てお返しをすればいいのかと、ずっと考えていました。でも、バンダナ様は決して見返りを求めなかった。悪魔を封じた時も、常に周りの人たちのことを考え、行動していました」
ふと、ユリアスの声がわずかに揺れる。
「私も……バンダナ様のようになれますでしょうか?」
「何を言っている。もう、なっているだろ」
ユリアスが周囲を見渡すと、国王とチェルシーが静かに頷いていた。
その姿を見て、ユリアスはまっすぐに胸を張る。
「バンダナ様……いつの日か、私が成長した姿を見に来てください」
「……わかった」
俺は皆に別れを告げ、静かにその場を後にした。
新たな冒険へ向けて——俺は旅立った。
至らぬ点ばかりの拙作でしたが、最後まで読んでくださり感謝いたします。
次に繋げられるよう、精進して参ります。