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第10話 冒険者ギルドへ

 

「へぇ~、あたいの『鑑定』でもスキルを確認できないとはね。こりゃ珍しい。さてはお前さん、『隠蔽』スキルでも持っているのかい?」


 チェルシーの鋭い視線に、平静を装いながらも内心ヒヤリとする。

 やっぱり、見透かされている気がする。


「まぁ、いいさ。それで、お前さんの名前は?」

「バンダナだ」

「ふーん」


 チェルシーは名前を聞くと少し考え込むようにしてから、急にカナベルを睨みつけた。


「カナベル、あんた左利きだろ? なのに、なんでバンダナとの訓練で右手に剣を握ってるんだい?」


 その指摘に、俺も驚いてカナベルを見る。

 カナベルはやれやれと呆れた顔をして答える。


「それは、バンダナが初心者だからだ。Bランクの実力を持つ俺が利き腕で本気で剣を振れば、訓練どころか、命に関わるからな」


 なるほど。数日の訓練でなんとか渡り合えていた理由が、これで腑に落ちた。


「ふーん。それにしては、戦技まで使って熱くなっていたじゃないか」


 チェルシーの言葉に、カナベルは険しい顔をする。


「剣の訓練で、いちいち口を出される筋合いはない。訓練の邪魔をするなら帰ってくれ」


 ピシャリと言い放つカナベルだったが、チェルシーはまったく動じない。


「要はあるさ」


 彼女の目が俺に向けられる。


「あたいの見立てじゃ、バンダナはそろそろ魔法の訓練もやってみたくなってるんじゃないかい?」

「うっ!」


 図星を突かれたようで、思わず声が漏れる。

 チェルシーはにやりと笑うが、その横でカナベルが即座に否定した。


「いや、今は剣の訓練が大事だ」


 そう言いながら、カナベルが小声で俺に耳打ちしてくる。


「彼女はやめておけ。魔法の腕は王都でも一番だが、訓練は地獄そのものだぞ」


 ……やばい人なのか?


「おい、そこ!」


 チェルシーが声を張り上げる。


「まったく、男ってやつは、なんでこそこそ話をするんだい。バンダナ、お前さんはどうなんだい?」


 その目がじっと俺を見据える。

 これをどう答えるかで、運命が変わりそうな気がした。


 意を決して、チェルシーの鋭い視線に負けずに答える。


「カナベル、すまない。俺は魔法の訓練を受けたい」


 その瞬間、周囲の近衛兵たちから一斉にため息が漏れた。


「いいねぇ! お前たちも見習いな! 男ってのは、虎穴に入らずんば虎子を得ずってね!」


 チェルシーは満足げに言うと、俺の肩を叩いて続けた。


「バンダナ、着いて来な」


 近衛兵たちは遠巻きに手を振り見送ってくれるが、その顔には明らかな同情が浮かんでいる。


 チェルシーに引っ張られ、歩き出したが、俺の胸には一つの疑問が浮かんでいた。


 なぜ、彼女が日本のことわざを知っているのか?

 俺がいた日本とこの世界には何か繋がりがあるのだろうか?

 興味は尽きないが、考え込んでいるうちに目的地へとたどり着いた。


「ここは……冒険者ギルド?」

「いいから、入りな」


 そう言って俺の背中をぐいっと押し、強引に中へ連れて行かれる。


 冒険者ギルドの中に入ると、ざわめいていた冒険者たちの視線が一斉にチェルシーに集中する。


「なに、じろじろ見てんだい。あたいは見世物じゃないよ!」


 彼女が一喝すると、冒険者たちは慌てて席を立ち、隣の食堂へと逃げ込んでいく。


 チェルシーって、ほんとにヤバいヤツなんじゃ……?


 呆然としていると、彼女に手を引かれ、受付まで連れていかれた。


「久しぶりだね、カトリーナ」


 チェルシーが親しげに声をかけると、受付嬢の女性が柔らかい微笑みを浮かべて応じる。


「お久しぶりです、チェルシー様。今日はどのようなご用件でしょうか?」

「別に大した用事じゃないけどさ、この連れを登録してくれよ」

「わかりました。お連れ様のお名前は?」

「バンダナだ」


 チェルシーは俺に振り返り、右手を軽く上げながら「行っておいで」と合図を送ってくる。


 促されるまま、受付嬢のカトリーナに案内され、奥の部屋に入ることになった。


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