怪談【帰り道】縛り伍連撃
【帰ろ、帰ろ】
学校の帰り道、近所にある心霊スポットに行こうと言う友人を、私は手を引いて止めた。
「どうして止めるの?」
「だって、それは……」
言い淀む私に、友人はにっこりと笑った。
「良いから、ほら! 帰ろう、帰ろう!」
逆に手を引く友人の肩の上、首をだらんと下げた女が笑った。
【笑顔】
今から十年前、都内在住の宮子さんが会社から帰っている時のことだ。
駅前のビル街で、道の真ん中に赤いハイヒールが片方だけ落ちている。
どうしてこんなところに靴が? と思っていると、頭の上にぴちょりと何かが当たった。
雨かな、と思い見上げると、そこには女の子いた。
目が合った女の子が、笑顔のまま、こちらに向かってきている。
あっ、かわいい--
思わず嬉しくなって、自然と笑い返した。
ぐじゃ、
その次の瞬間、目の前の道路に女の子が叩きつけられて死んだ。
人死にを見たのは、それが初めてのことだった。
【あそぼ】
透さんがバイト先で失敗して落ち込んでいた帰り道、ある林の横を通ったら、なんだか楽しげな音楽が林の奥から聞こえてきた。思わず耳を澄ましていると、
「とおるもあそぼ!」
と、自分を呼ぶ声がする。
誰か知り合いでもいるのかなと、驚きつつも林の奥の方を凝視してみると、そこには、薄汚れた日本人形が何体も木の枝からぶら下がっていて、
「とおるも、あそぼ、あそぼ!」
と、自分のことを呼んでいた。
それを見て以来、透さんはその道を使うことは一切なかったという。
【行列】
家へ向かっていつも、たくさんの行列ができている。
学校の帰り道、いつもその列に並んでいると娘は言う。
家が昔処刑場跡地だと、娘にまだ言えないでいる。
【赤いリボン】
夕方、槇本さんが買い物をした帰り道でのことだ。2、3日前から寝込んでいる妹のために、コンビニでスポーツドリンクを買いにいっていたのである。
コンビニの袋を片手に、いつもの畦道を歩いていく。だが、家のすぐ前の地面で何かにつまづいた。見てみると地面の一部分だけ、何かを埋めたような跡がある。
何だ? と思い槇本さんは、指先で土を軽く掘り起こした。すると出てきたのは、赤いリボンでまとめた、長い黒髪の三つ編み。
気持ち悪い! と思った槇本さんは、指でつまんだそれを道へ放り投げた。
すると、髪はまるで蛇のように身をくねらせ、そのまま田んぼの中へと消えていった。
後日、妹さんは嘘のように調子が良くなり、全快した。
だが、それを同じくして、妹の親友が事故に遭い、顔にひどい火傷をした。