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【セルフ改稿作業中】悪役にはなるつもりもないので、思い出した時点で「わたくし、悪役令嬢みたいですの」と婚約者に告げてみた  作者: ロゼ


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ルーカス様との茶会ですわ

「あの...手を...握っては...もらえないかな?」


わたくしの近くにやって来たルーカス様がおずおずとした様子でそう訊ねてきたのだが、そこですかさずレンが「駄目だ!手ならは私と繋ぐといい!」と言い出して男同士でしっかりと手を繋ぐ不思議な光景を目にする事になった。


「眩しい...」


怖々と窓辺に近付いたルーカス様は太陽光が目に痛いようで手で影を作りながら外に目を向けている。


庭で作業をしていた庭師らしき男性が窓辺に立つルーカス様に気付き目を見開いて驚いた顔をしたと思ったら嬉しそうに笑いながら涙を流し始めてわたくし思わず貰い泣きしそうになった。


「美しいお庭ですわね」


「うん、本当に綺麗だ」


「ね?勿体ない事をされていたでしょ?」


「そうだね、勿体ない事をしていたのかもしれない、いや、していたんだね」


「無理にとは言いませんが、時々こうやってお庭をご覧になるのもよろしいかと思いますわ。そしていつか、ほら、あちらに見えます四阿でお茶などしながらお話されても楽しいと思いますのよ」


庭の左側中央にある薄水色の小さな四阿を指さしてそう言うと、ルーカス様がこちらを見ながら「その時は一緒にお茶をしてくれる?」と訊ねてきたので「勿論ですわ」と答えると、ルーカス様が愛くるしい笑顔を浮かべた。


「その時は私も一緒に!」


負けじとレンがそう言ってきたので「当然ですわ」と言うとルーカス様以上に嬉しそうに笑って、何故かルーカス様が少しだけ膨れっ面になったように見えた。


帰り際「また来てくれるかな?」とルーカス様に言われたので「はい」と答えようとしたのだが何故かレンに邪魔されてしまった。


お友達を取られたような気がして嫌な気分にでもなったのかしらね?


レンのお友達を取ったりはしないわ、流石にわたくしでも。


婚約者がいるのだから、レンが一緒の時ならばともかく2人きりでなんて会う事もなければお話だってしないわよ、流石に。


と思っていたのだが、何故か翌日にジェロニカ侯爵様より直々にお礼状が届き、「是非またルーカスに会ってやってください」なんて事まで書いてあり、ルーカス様のお母様であるシェリア様からも直々に手紙が届き、「アーレン殿下の婚約者だと言う事は重々承知の上なのだけれど、ルーカスの話し相手になっていただけないかしら」と軽めの打診があり、レンと相談した結果「時々なら」と了承を得た為に、月に一度だけだがルーカス様と茶会をする事が決まった。


それ以外でもレンがルーカス様を訪ねる時は一緒に行く事になり、茶会もレンが参加出来る時は3人で行う事と決まった。


「本当は行って欲しくないんだが...」


「まさか、嫉妬ですか?」


「...そうだよ、嫉妬だよ...ルーカスに心惹かれたり、しないよな?」


「まぁ!そんな心配を?!有り得ませんわ、わたくし、こう見えてレン一筋ですのよ」


「そうか!そうか!」


一気に顔を明るくしたレンはわたくしをギュッと抱き締めたものだから、わたくし突然の事に驚き過ぎて固まってしまいましたわ。


「可愛い...」


茹で蛸のように赤くなっている顔を見てレンがそんな事を言うものだから「も、もう!からかわないでくださいまし!」と申しましたのに、レンったら「本当に可愛い」と頬に口付けまでする始末。


あまりの事に腰が砕けたようになってしまって、レンがわたくしの大好きな笑顔で笑いながらわたくしを支えてくれて、胸の高鳴りが止まりませんでしたわ。



本日はルーカス様との月に一度の茶会の日。


本当はレンも来るはずだったのだが急に予定が入ってしまってわたくし1人でルーカス様の屋敷に向かう事になった。


あの日以来ルーカス様は窓からお庭を眺めるのが日課になり、最近ではほんの少しだけ侍従の者と一緒にお庭に出る事も出来るようになったそうだ。


本日の茶会はお庭のあの四阿でとルーカス様自らが言い出したそうで、四阿はもうガーデンパーティーでも開けるのでは?という程に飾り立てられていて「まぁ!」と思わず声が出てしまった。


四阿の中央にある丸テーブルには繊細なレースのテーブルクロスが敷かれ、四阿を半周囲むように長テーブルが配されており立食パーティーさながらの料理が並んでいる。


四阿の柱には綺麗に花籠が飾られていて、丸テーブルの中央にもこんもりと盛られた花籠が品良く配されている。


ティーワゴンには青磁のティーセットが並び、3段重ねのティースタンドには愛らしい茶菓子が並んでいる。


「ぼ、僕が、庭でお茶をと言ったら、皆が、張り切ってしまって」


照れ臭そうに頬を染めてそう言うルーカス様は儚げな美少年といった風貌で、初めて会った時よりも頬はふっくらとしており血色も良い。


「そうでしたのね。皆、ルーカス様が外に出るのが嬉しいのですわね。わたくしも嬉しいですわ」


「そ、そう?良かった...」


俯く事が多いルーカス様だが、時折こちらをしっかりと見るその目には以前はなかった明るい色が見える。


「早く、外に出られるようになりたい、けど、外はまだ、怖くて」


「焦る事はありませんわよ。焦っても良い結果は生みませんもの。少しずつ、少しずつ世界を広げて行けばいいのですわ」


「そうだね...うん、そうする」


「それよりも、このスコーンとクロテッドクリーム、とっても美味しいですわ!ルーカス様もお食べになりまして?」


「それ、僕も好きなんだ。うちのコックの自信作なんだよ」


「これは何処に出しても喜ばれますわよ!」


「ふふ、きっとコックも喜ぶよ」


お土産にとスコーンとクロテッドクリームをたっぷりいただいてしまい「また来てね」と愛らしい笑みを浮かべるルーカス様にお礼を述べて帰路に着いた。


帰り際にルーカス様に何か言われた気がしたが聞き取れなかった。

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