クリスマスデートですわ Part3
やっぱりディナーの詳細描写は私に合わないので元の作風?に戻りますm(*_ _)m
お肉料理、サラダ、デザートを美味しくいただき、食後の紅茶を2人で楽しんでいる。
「これ、クリスマスプレゼントですわ」
ラッピングをしてもらった手袋の包みをレンに渡すとレンはパァッと顔を明るくした。
「ありがとう!今年は何かな?と、その前に、俺からも、これを」
レンから渡されたのは小さな白い箱にピンク色のリボンが結ばれた物。
「開けてみていい?」
「わたくしも、よろしいかしら?」
「じゃあ、一緒に開けようか」
2人でそれぞれの品を確かめる。
「おぉ!レインボーリザード!」
「まぁ!可愛い!」
わたくしがいただいのは青いレンの瞳を思わせる石が使われているピアス。
「これは...サファイア?それにしては...」
「ブルー・ダイアモンドだよ」
前世でも希少価値が高く大変高価だったブルー・ダイアモンド。
この世界でもとても高価である。
石言葉は「永遠の幸せ」。
「こんな高価な物を?!」
「どうしてもベルに贈りたかったんだ。デビュタントでピアスを付けるだろ?その時に付けて来て欲しいんだ」
耳に穴を開ける必要のあるピアスはデビュタントの日から付ける事が許されるアクセサリーである。
デビュタントで身に付ける物は親から子への成人祝いの贈り物という意味合いがある為、婚約者がいても婚約者から贈られる事はないのが普通なのだが、ピアス位ならば許してもらえるかしら?
流石にうちの両親でもブルー・ダイアモンドのピアスを用意するのは難しいはずだし、この位は許してもらおう。
「ありがとうございます!是非付けたいと思いますわ」
「俺の方こそ素敵なプレゼントをありがとう。とっても着け心地がいいし、それにレインボーリザードがとても綺麗だ」
「気に入っていただけまして?」
「あぁ、とても気に入ったよ」
「ですが、ブルー・ダイアモンドのピアスをいただいたのにわたくしからのプレゼントが手袋だけだなんて差が付きすぎですわ。よろしければわたくしからもデビュタント用のピアスをプレゼントさせていただいてもよろしいかしら?」
「気にしなくていいんだけど、じゃあその言葉に甘えてもいいかな?」
「勿論ですわ!」
「じゃあリクエストだ。デザインはベルに贈った物と同じ物で、石はベルの目の色の物がいいな」
「わ、わたくしの目の色、ですか?!」
「うん、どうせもらうならベルの色を身に付けたい。色違いのお揃いだと尚嬉しい」
「わ、分かりましたわ...」
「ベル、顔が真っ赤だ...可愛い」
「そ、それはレンがわたくしの色を身に付けたいなんて仰るから!」
「好きな女性を自分の色で飾って、自分も好きな女性の色を身に付けたいと思うのは普通じゃない?」
こういう時のレンは口調も甘く、言葉も饒舌になりがちだ。
これが普段から、特に人前で出来るようになれば良いのだけれど、わたくしだけを特別に想ってくださっているのだと思うとこのままでいて欲しいなんて思ってしまう。
後に為政者となる身のレンなのだからこのままではいけないのだけれど、誰にでも親しげに話せるようになったレンの姿を想像すると少し寂しい。
わたくしって我儘ですわよね...。
*
レストランを出て馬車までの道のりをのんびりと手を繋ぎ歩く。
レストランは普通の民家なので馬車を停めるスペースがなく、馬車はレストランから少し離れた場所に停めてある。
夜の帳はすっかりと落ち、見上げた夜空には細い三日月が上っていた。
何も話さなくても満たされる時間。
そんな時間を壊したのは、学院で嫌という程に聞いたヒロイン・アリシアの声だった。
「あっ!アーレン様♡」
鼻も頬も真っ赤に染めたアリシアがこちらに駆けてくるのが見えた。
しかしそこは雪道。
勢いよく駆け出したアリシアは半分凍りかけた道に足を取られて派手に転んだ。
ズテンと思い切り転んだアリシアの口からは「ウグッ」と普段は聞く事のないような声が出ていた。
「だ、大丈夫ですの?」
「構うな、時間の無駄だ」
グッと引き寄せられてレンに肩を抱かれた。
そのままスタスタと転がっているアリシアの横を通り過ぎたのだが、何とか立ち上がったアリシアはわたくし達を追いかけて来る。
「来させるな!」
「「はっ!」」
護衛として着いて来ていた騎士達が「アーレン様ぁ!」と叫んでいるアリシアを止め、わたくし達は馬車に乗り込んだ。
「何故こんな日にあの女の顔を見なければならないんだ...折角幸せな一日だったのに台無しじゃないか!」
「わたくしはとっても楽しかったですわよ?」
「俺も!楽しかった」
「アリシアの事はいいではないですか、気にしなければ。気にしたら負けのような気がしますわ」
「そうだな。...なぁ、ベル。隣に座ってもいいか?」
「えぇ、いいですわよ」
2人で並んで座る馬車の中。
隣から伝わるレンの体温にドキドキし、ふいに繋がれた手に体の熱が上がる。
外はまた降り始めた雪でとても寒そうだけれど、馬車の中はもう外の事なんか考えられない程甘く幸せな空間だった。




