クリスマスデートですわ
さて、本日はクリスマスでございます。
わたくしの家ではクリスマスイブからクリスマスに掛けては家族と共に過ごし、クリスマスの日は両親は2人で観劇や食事に出掛け、兄2人はそれぞれ婚約者と過ごしたり友達と過ごしたりしておりまして、わたくしは毎年レンと過ごしております。
毎年この時期は家族へのプレゼントやレンへのプレゼントに頭を悩ませますのよ!
わたくし、少々プレゼントのセンスがないようでして、家族からは「普通の、もう食べ物でいい!」と言われてしまい、最近では専ら美味しいと有名な店のお菓子を贈っております。
レンはわたくしが何を贈っても喜んでくださるのですが、実は心の中で「うわっ!こんな物を?!」と思われてはいないかとドキドキしております。
今年のプレゼントは無難に黒い革の手袋に致しました。
内張りがフワフワのモコモコ素材になっており、試着してみましたけれどとっても温かく、お揃いでわたくしの分も注文致しましたのよ。
ですがごく普通の手袋ですとわたくしからの贈り物として認識して頂けない可能性もありますでしょ?
ですからね、レンの好きな『レインボーリザード』のワンポイントを特注でお願いしましたの。
レインボーリザードとはその名の通り虹色のトカゲですわ。
前世のトカゲよりも目がクリクリと大きく、何とも愛くるしい容姿をしておりまして、頭の先から虹色のグラデーションをしているトカゲです。
最終確認した手袋には手の甲の部分にレインボーリザードがきちんと刺繍されており、とても満足行く仕上がりとなっておりましたわ!
喜んでもらえれば嬉しいのですが。
あ、わたくしの手袋にはわたくしの愛する『ドングリリス』を刺繍して貰いましたわ!
ドングリリスとはドングリが大好きで特定のドングリの木にしか巣を作らない黄土色の毛のリスでしてね、背中に真っ白い毛の一本筋が走っておりまして、その筋が伸びた先にある尻尾は純白でフサフサなのですのよ!
掌に乗る程の小さい体に白いモフモフフサフサな尻尾!
目は真っ黒くてクリンクリン!
可愛いを凝縮しているリスなのですわ!
初めて生のドングリリスと対面した時はあまりの可愛らしさに叫び出しそうになるのを堪えるだけで大変でございましたわ。
ペットとして飼いたい所ですけれど、ドングリリスは個体数が年々減っている為に勝手に捕まえたりする事を禁止されている動物なので諦めましたわ。
時折出会えるその瞬間を神に感謝して存分に目に焼き付ける事としております。
*
本日はレンが我が家まで迎えに来て、2人で美術館へと向かって今開催中の『ラリア絵画展』を見てから食事に参りますの。
ラリアとは新進気鋭の女性画家で、主に動植物の絵を描いているのですが、特にドングリリスの絵を多く描いている方で、その絵が大変可愛らしい事で有名でして、一度見たいと思っておりましたの!
一人で行く事も視野に入れていたのですけれど、レンが「クリスマスに一緒に見に行こう」と誘ってくれたので二人で見に行く事となりましたのよ!
「そんなに楽しみ?」
「ええ!もう楽しみ過ぎて昨夜は中々寝付けませんでしたわ!」
「少し妬けるな...ベルの一番の関心事は俺であってくれたら嬉しいのに」
「レンが一番に決まっていますわ!そうだ!レインボーリザードの絵もあるのかしら?レン、お好きでしょう?」
「あぁ、レインボーリザードはあの色味が好みだな」
話をしている間に美術館に到着致しましたわ。
クリスマスに美術館に行くというのもまた趣きがあって素敵ですわよね。
ラリア絵画展が行われている美術館は国立美術館とは違ってとある貴族の個人資産で建てられた小さな美術館ですわ。
建てた本人は既にお亡くなりになっており、その方の血縁の方が維持していらっしゃるそうなのですが、中々表に出てくる事がないお方のようで何処の誰なのか広く知られていない謎多き美術館でございます。
総煉瓦作りの二階建ての小さな建物は実にシンプルな箱型で、言われなければ美術館だとは気付かないような見た目をしていますわ。
中に入ると吹き抜けのエントランスがあり、中央に二階への階段が伸びており、右と左にそれぞれ空間が造られていてそこに絵が飾ってありましたわ。
お目当てのラリア絵画展は二階のようで、わたくし達は一階をさらりと見回った後に二階へと移動致しました。
「まぁ!まぁまぁ!」
右側の空間は動物画が多く飾られており、一番初めに目に飛び込んで来たのはドングリリスでございました。
ラリアは色覚異常がある画家としても有名で、緑色と赤色の区別が付かず、緑色が赤色に見えているようです。
森の木々の葉や草原の草等は赤だったり緑だったりしており、それが不思議な雰囲気を醸し出しておりますわ。
赤い草の上にちょこんと佇むドングリリス。
「何と可愛らしいのかしら」
「この赤い草がドングリリスを引き立てているな」
「緑の中にいるのも可愛いですけれど、赤い背景もとっても合いますわね!」
もう何時間でも見ていられる程に愛くるしいドングリリスにすっかりと夢中になってしまいましたわ。
「こちらにはレインボーリザードもありますわ!」
暫くドングリリスの絵を堪能した後はゆっくりと絵画展の絵を鑑賞致しました。
レンはやはりレインボーリザードの絵が気に入ったようで、既に買い手が付いていると聞き残念がっておられました。
わたくしはこっそりとドングリリスの絵の購入予約を致しましたわよ。
買えなかったレンに申し訳ないと思ったのでこっそりと予約したのですけれど、後から「ドングリリスの絵をプレゼントしようと思ったのに既に売約済みだった。すまない」と言われてしまい酷い罪悪感に襲われてしまいましたわ。
「それ、わたくしなのです...レンが買えなかったのにわたくしだけ購入するというのは何とも心苦しくて、こっそりと予約致しましたの...ごめんなさい」
「そうか、ベルが予約したのか!ベルの手に渡るのならそれでいい。あ、代金は俺に払わせて欲しい」
「よろしいの?」
「あぁ、その位なんて事はない」
レンは資産運営をしている為、国の財源である王太子費用は使わない主義でして、元手となった初期費用の王子費は既に返済済みです。
「民からの大切な税金を無駄遣いは出来ない」
こんな所もわたくし大好きですの!