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ダンス発表会ですわ

誤字報告ありがとうございます。

本日はダンス発表会でございますわ。


イシュタリカ学園は平民の方も少しいらっしゃいますが基本的に生徒は貴族。


爵位の上下はあるけれど、貴族としての基本的な物を学ぶ学校である。


その一環としてダンスの必須科目がある訳だが、その成果を発表する場として年に一度ダンス発表会なる行事が行われる。


但し全校生徒一緒に行うのではなく学年毎に日にちを変えて王城のパーティー形式に則って行われる。


それが今日なのでございます。


普通に考えたらこのダンス発表会もゲームのイベントに登場していいものだが、ゲームではダンス発表会はなかった。


ダンスを踊るのは確かデビュタントの時のイベントだったけれどまだその時ではない為はっきりと思い出せてはいない。


ダンス発表会でのドレスは学園側で用意している練習時の皆同色同デザインの物である。


女子生徒は飾り気の少ないプリンセスラインのクリーム色のドレスで、男子生徒はグレーの燕尾服となる。


踊る曲も決まっており、今回わたくし達が踊るのは古くから愛されているワルツ2曲。


高学年になるとタンゴやチャチャチャ等の激しいダンスが加わってくるそうだが、学園に入学してから初めてダンスを習う学生もいる為に1年生でたるわたくし達はテンポが緩やかなワルツとなっている。


ドレス、曲は学園側で決められているがパートナーに関してはその選択は学生に委ねられており、婚約者がいる者達は婚約者を、いない者達は自分でパートナーを探さなければならない(申し込んだり申し込まれたり)。


わたくしは当然レンがパートナーである。


「もしも他に誘いたい方がいらっしゃるのなら」

「それ以上言ったら泣くよ」


万に一つも他に誘いたい方がいるのならばと思ってそう告げてみようとしたのだけれどレンに潤んだ瞳でそう言われた。


ガルゴリー様のパートナーも婚約者であるイリーナ様。


アリシアは誰と踊るのだろうかと思っていたのだが教室内で見ている限り誰にも誘われておらず、ガルゴリー様に「私、パートナーがいなくって...」と甘えるように声を掛けていた。


「そりゃ大変だな!」


誘って欲しい雰囲気満々のアリシアに対してガルゴリー様はそう言うと「頑張れ!」と太陽のような笑顔で笑っていた。


レンの元へも来そうになっていたがレンが「俺に近付くな!」のオーラを発していた為に近付いて来なかった。


そして何を考えたのか学年が違うのにポラリティ様に「パートナーがいなくて...」とガルゴリー様にしていたのと全く同じ顔で話し掛けていた。


「あーら、大変ねぇ。でも私、学年が違うし、もし同じ学年だとしてもあんたのパートナーになってあげる謂われもないし、頑張って探すのね」


すげなく断られていた。



学園の中ホールの扉の前にはパートナーと連れ立った生徒達が名を呼ばれるのを待っている。


城で行われるパーティーでは爵位の低い者達から名を呼ばれ会場入りする。


城でのパーティーはデビュタントの時以外はほぼ伯爵位以上でなければ功労でも立てなければ呼ばれる事がない為高位貴族よりも圧倒的に多い下級貴族はそういう機会は少ないのだが、それでも何時機会が訪れるとも分からない為にそういう場合の練習も兼ねている。


わたくし達が呼ばれるのは一番最後。


レンが王族である為に当然一番最後となる。


本来のパーティーであれば名が呼ばれる時間までが長い場合は待合室や待機場で待つのだが、今回は皆会場の扉の前で並んで待っている。


ダンス発表会といっても授業の一環である為、呼ばれて会場入りする瞬間から教師達による採点が始まるのだが、その採点結果は後日「ここはこうしましょう」と注意点の書かれた用紙を渡されるだけで済む。


この結果が成績に大きく影響する事はない。


わたくし達の名が呼ばれ会場入りする時となった。


差し出された腕にそっと手を添え一歩踏み出すとその場に留まり、男性は軽く頭を下げ、女性はドレスを摘んで軽く膝を折り頭を下げて一礼する。


男性の右側が女性。


これは男性パートナーは女性パートナーに対しての騎士の役割もある為に帯剣している左側を空け、いざという時にサッと剣が抜けるようにする為である。


ドレスを踏まれないように半歩程男性よりも身を引くのが良いとされているが、わたくし達の場合はレンがそれを嫌がり横に並んで欲しいと切望された為に普段は横並びで立つのだが、今回は規定通り半歩程下がっている。


まぁ普段はレンの腕に手を添えるのではなく、レンにしっかりと腰を抱かれて会場入りするのでそこからしてもう常識から外れてしまっているのだけれど、授業の一環なので今回はそれに則った動きをする。


皆が会場入りすると暫しの間歓談時間となり、その後パーティーの主役となる王族が登場し何か一言発せられたり、功労者を称えたりの時間があるのだが今回はそこは省かれている。


王族がパートナーとのファーストダンスを踊った後、皆がパートナーと踊り、その後は誘われた方と踊る事となる為、わたくし達のダンスが一番初めとなる。


「イザヴェル・ドミニクス嬢。私にあなたと踊る栄誉をお与えいただけますか?」


左手を腰の後ろにあて、少しだけ身をかがめて右手を差し出すのがこの世界のマナー。


前世ではどうなのかは社交ダンスに無縁で生きていたわたくしには分からない。


OKの場合差し出された手に手を添える。


NOの場合は小さく頭を下げてお断りする旨を伝える。


この時決して相手に対して失礼な態度をとってはならないのがマナーである。


「喜んで」


「では、参りましょう」


男性が差し出した右腕に手を添えホール中央へと行くと音楽が始まる。


わたくしとレンはもう何年も踊っている為に息もピッタリで、互いの癖も苦手なステップも分かっている為にとても踊りやすい。


「この曲、懐かしいな」


「覚えておいででしたのね」


「忘れる訳がないだろう」


ファーストダンスで流れている曲は何時誰が作曲したのか分からない程に古くから愛されている曲で、わたくしとレンが婚約を結んでから初めて一緒に踊った曲でもある。


「あの時はお互いにまだ下手くそでしたから、互いの足を踏み合いましたわね」


「俺の方がベルの足を踏んだ回数が多くて、ベルの足が壊れてしまいやしないかと冷や冷やしたな」


「あの程度で壊れてしまうようなやわな足はしておりませんわ」


「だが赤くなっていただろう?」


「それはお互い様ですわ。レンの足も赤くなっていましたもの」


初めて踊ったダンスは技量も然ることながら互いに緊張しすぎてしまいお世辞にも素晴らしいとは言えない惨憺たるものだったのだが、今となっては愛らしい思い出である。

4/8にとある方のライブに行ってきたのですが、最高過ぎてテンションが戻らず更新止まってました(。-人-。)

真横を通り過ぎて行かれた時には心臓止まるかと思いました。

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