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ヒロイン乱入ですわ

第2イベントも尽く不発に終わってしまったアリシア。


何を思ったのか方向修正を始めたようですわ。


この所何かにつけてレンや他の攻略対象者の周辺をウロチョロされておりますわ。


レンは全く相手にもしていませんが、カルゴリー様は気軽に接しておられます。


ルーカス様は学園におられませんしポラリティ様は学年が違いますのでどのようになっているのか分かりませんが、アリシアの焦り具合からして上手くいってはいないのではないかと思います。


「何故ルーカスが学園にいない事に未だに気が付いていないんだ?」


「さぁ、何故でしょうね?」


誰かに聞いてみれば直ぐにでも分かるはずですのに、アリシアは未だにルーカス様がこの学園にはいない事を知らないようです。


そもそもゲームでは同じクラスのはずなのに教室にいないのだから早々に気付きそうなものなのに。


色々と設定から外れている事が多いのに不思議ですわよね。


設定から外れていると言えば一番外れているのはヒロインであるアリシア自身。


ヒロイン・アリシアはその明るく無邪気な性格からすぐにクラスの人気者になるというのがゲームの流れなのだけれど、実際のアリシアは花瓶騒動以降は特にクラスメイトから遠巻きにされており、挨拶程度は交わしているようだが人気者にはなっていない。


攻略対象者以外には興味がないといった態度をしており、気を回して話し掛けるクラスメイトに激辛塩対応なので寧ろ嫌われているようだ。


人に好かれやすい外見をなさっているのに自らその価値を下げに行くなんて...わたくしなんて友達が欲しいと思っているのに皆この顔が故に怖がって近付いて来ないというのに...。


世の中って不公平ですわよね!



本日はわたくしとレンとで学園の中庭にてランチの約束をしておりまして、何とわたくしが自らの手で全て作った手作りのお弁当をレンに食べてもらう事になっておりますの!


前世の記憶が戻ってからわたくし「料理がしたい!」と思うようになり、そしてこの世界にはない前世の料理が非常に恋しいと感じるようになり、家族と料理長に頼み込み料理をする許可をもぎ取り、今では「趣味でございますのよ」と胸を張って言える程腕を上げておりますわ。


唐揚げ、玉子焼き、ハンバーグ、グラタン、コロッケ等々、前世で王道と呼べる物は1人で作れるようになりましたわ!


最初は包丁を握る事すら大変でしたけど。


前世ではわたくし料理を嗜んでいたはずですのに、頭で覚えていてもいざとなると包丁の使い方を理解していても体が付いてこないものだという事を思い知らされ愕然と致しましたわね。


醤油や味噌がないので肉じゃがや味噌汁、生姜焼き等は作れませんが、唐揚げはスパイス等を使ってそれっぽく完成しましたし、玉子焼きはわたくし前世では甘いのが好みだった為に醤油がなくとも甘い玉子焼きが出来ましたので良しとしておりますわ。


米・味噌・醤油が欲しいですわよねー、切実に。


焼きおにぎりにお漬物に味噌汁...食べたいですわね。


本日のお弁当はと申しますと、無難にサンドイッチですわ。


無難であり王道のタマゴサンドにツゥナ(前世のツナですわね)サンド、ガッツリとカツサンド、ヘルシーなエビとレタスと玉ねぎのサンド、少し贅沢なローストビーフのサンドを作りましたわ。


タマゴサンドとツゥナサンドには特製マヨネーズが混ぜてありますわよ!


マヨネーズはこの世界にはありませんでしたので、中学の頃に作ったという前世の記憶を必死で思い出し頑張って作りましたわ。


前世の物よりも幾分か酸味が弱いのはわたくしの好みの問題ですわね。


酸味の強いマヨネーズが苦手でしたのよ、前世のわたくし。


サンドイッチだけでは物足りないかと思いましてレンが大好きな唐揚げも添えてみましたわ。


デザートにはフルーツゼリーを。


お茶は学園でも用意出来ますのでそちらで。


完璧でしょ?


朝から張り切ってしまったので今少し眠たいのですけれど、愛するレンの為ですからこの位何て事ありませんわ。


「お待たせ」


先生に呼ばれて後からやって来たレン。


わたくしの隣に座るとバスケットの中身を見て目を輝かせている。


「凄い!作るの大変だっただろう?」


「いいえ、この位何て事ございませんわ。レンに食べてもらえるのですもの、作る時間すら愛おしいですわ」


「ベル...」


嬉しそうに頬を染めるレンがとても可愛らしいと思うけれど口には致しません。


殿方は「可愛い」と言われるのを嫌がる傾向にあるようですので。


「さぁ、召し上がってください」


「うん、いただくよ!」


小さな串の刺さった唐揚げを摘むとポイッと口に放り込んだレンは「やっぱりベルの唐揚げは美味しい!」とモグモグしながら愛らしく笑いましたわ。


本当にレンは可愛らしいですわ。


この可愛さを一人占め出来るわたくしは幸せ者ですわね。


わたくしもエビのサンドイッチを手に取り小さく齧り付きましたわ。


貴族ですけれど、流石にサンドイッチは手で持って齧り付くの事を良しとする食べ物ですので、ナイフとフォーク等使いませんわ。


───ガサガサガサ。


突然わたくし達がいる横の茂みがガサガサと音を立てて揺れ、そこから頭や制服に小枝や葉っぱを付けたアリシアが現れました。


「レ、アーレン様!」


今絶対に「レン様」と呼ぶ所でしたわよね。


「こんな所でランチですか?!奇遇ですね、私もこれからランチなんです!」


手にはグシャグシャの紙袋が握られておりますわ。


「ご一緒してもいいですか?いいですよね?」


「...邪魔しないでもらいたい。私は愛しい婚約者とランチを楽しんでいるんだ」


「へ?愛しい?...またまたご冗談を!」


「何故お前に冗談を言う必要が?」


「え?だって...ねぇ?」


チラッとわたくしを見て同意を求めるような顔をしているアリシア。


『だって迷惑な婚約者でしょ?』とでも言いたいのかしら?


「とにかくお前と一緒にランチなど御免蒙る!食べるなら別の場所に行け!」


「そんなぁ!冷たい!」


「...ごめんなさいね、アリシア様。今は婚約者同士の貴重な時間ですの。御遠慮いただけませんこと?」


「うっわー、出た!聞きましたか、アーレン様!イザヴェル様ったら酷いですよね!」


わたくし、何か酷い事言いましたかしら?


「そんな冷たい言い方しなくても良くないと思いません?思いますよね?ね?ね?」


わたくし、そこまで冷たい言い方をしておりましたかしら?


「思わない」


レンの言葉にアリシアは「何で?!」という顔で固まってしまいましたわ。


もうね、この前からわたくし、脳内でアリシアと呼び捨てにしておりますけど、元々の爵位的にもアリシアの方が下ですし、様を付けて敬わなくても宜しいのでは?と思ってしまったのよね。


なので今後も脳内では様なしで呼びますわ。


「冷たい言い方に聞こえてしまったのならば申し訳ございません。ですが、先程も言いました通り今は婚約者同士の貴重な時間ですの。どうか御遠慮いただけませんこと?ほら、あちらの方に空いているベンチもございますでしょ?本日はそちらで召し上がっては如何かしら?」


「酷い!私に1人で食べろって言うんですか?!1人がお似合いと?!酷い!」


どう解釈すれば「1人がお似合い」となるのでしょうか?飛躍しすぎではございません?


そもそも誘われてもいないのに突然現れて強引に一緒にランチをしようとするあなたはどういう神経をなさっているのか、正直わたくしには理解出来ませんわ。


わたくしとレンは婚約者。


その婚約者同士の大切な時間に乱入してくる事程不躾な事はないと思うのですけれど?


「お前が消えないのならば私達が立ち去ろう!行こう、ベル」


「はい」


ササッとランチをバスケットに仕舞い、レンに手を引かれてその場を後にしましたわ。


アリシアは何やら叫んでいましたけど、レンが無視しておりましたからわたくしも無視致しました。


せっかく日差しが心地の良い中庭でのランチでしたのに、食堂の特別室でのランチに変更されてしまいましたわ。


まぁ、特別室だろうとレンが美味しそうに食べてくれる顔が見られたので問題はないのですけれどね。

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