転生者、ですわね
担任となる先生の説明が終わり、皆で入学式が行われる大講堂へと移動する事となりましたわ。
わたくしとレンは勿論アリシア様に注目しております。
あ、ここでヒロインであるアリシア様の容姿をわたくしの視点からお伝えしておきますわ。
アリシア様は凡そ身長が150cm程の小柄で華奢な体付きをされており、髪の色はヒロインの定番であるピンクでございます。
何故ヒロイン=ピンク髪が多いのか前世の頃から疑問なのですが、どなたか正解をお知りの方、ご一報いただけましたらわたくしの長年の疑問がサクッと解決致しますわ。
瞳の色はこれまたピンクで、そのピンクの瞳はクリクリと丸く大きく少し垂れ気味の、まるで小動物を思わせる愛くるしさがございます。
小ぶりの鼻にチェリーピンクにぷっくりと色付いた小さな唇が小さな顔に収まっており、頬はチークを塗っておられないようにお見受けしますがほんのりとピンクに色付いております。
ピンクの髪は背中の真ん中辺りまで伸びており、ピンクなのにまるで金髪のようにキラキラと輝き、見るからにフワフワと柔らかそうです。
お胸の方はわたくしと比べたらまだまだ発展途上と言いますか、今後に期待という所と言えばよろしいのか、少々寂しげな感じが致します。
ウエストは程良く括れていらっしゃいますので、全体的にはバランスの良い体型をなさっていらっしゃると思いますわ。
とまあ、このような外見のヒロイン・アリシア様でございますが、そのアリシア様は今、皆で大講堂へと移動している列から何故か突然外れてしまいました。
「あっれー?」
素っ頓狂な声を出しながら列から外れる様は実に態とらしいのですが、あれは演技なのか素なのか...どちらなのでしょう?
流石に後を付けると目立ちますので、遠目からしっかりとその姿を目視で確認しているのですが、恐らくルーカス様をお探しなのでしょうね。
辺りをキョロキョロしながらあっちへフラフラ、こっちへフラフラとなさっておられますわ。
「ルーカスを探しているよな、間違いなく」
「そうですわね...ルーカス様が入学なさっていらっしゃらないのをご存知ないのでしょうね」
ルーカス様はわたくし達と共に入学なさりたいと言っておられましたが、まだ通える程にお心が回復なさってはおられず、今年の入学は見送られる事となりました。
もしかしたら来年度から途中編入という形で一緒に学べるかもしれませんが、今はまだハッキリとは言えない状況。
だけど恐怖に打ち勝とうと頑張っておられるので見守りつつ応援しております。
暫くあちこちフラフラなさっていたアリシア様ですが、列から外れた事が先生に見つかり、またしても叱られていましたわ。
「あの子、何やってるの?」
「え?まさか迷子になってたの?」
「嘘でしょ?!列になって行動してるのに迷子になる?!」
叱られているのに気付いたクラスメイト達がザワザワとし始めました。
皆で移動しているのに勝手にはぐれてしまえばそうなりますわよね。
先生に連れられて列へと戻られたアリシア様は皆に奇妙な生き物を見るような目で見られている事には全く気付く事なくブツブツと独り言を言っておられました。
独り言とは思えない声量でしたので、周囲の方々の目が更に珍獣を見るような目に変わりましたが、やはりアリシア様は気付いておられません。
「はぁ、何なのよ!何で尽く出会いイベント起きないのよ!すぐ近くに攻略対象がいるのに何でイベント定位置にはいないのよ!」
一瞬わたくしと目が合ったアリシア様はわたくしを睨み付けていらっしゃいますが、顔がとても愛らしい為迫力に欠けます。
わたくしが睨んだらきっと周囲を一瞬で凍り付かせる自信がありますわ!だってわたくし悪役令嬢ですもの。ふふふ。
「何でレン様があの女と一緒にいる訳?政略結婚の婚約者でしょ?愛されてないのに張り付いてる感じ?あー、邪魔!」
この言葉はしっかりとレンにも聞こえており、レンの周囲の空気が一気に冷たくなったように感じました。
「レン...怖いですわ」
「あ、あぁ、ごめん」
レンの変化に気付いたクラスメイトの方々の顔色が青くなってしまいましたわね。申し訳ございません。
「絶対に前世の記憶があるよな?」
「ありますわね、悲しい事に...」
もう紛うことなく恋ラビを知っているのは疑いようがございませんわね。
という事はわたくしと同じく転生者であると考えるのが自然な事。
悪役令嬢のわたくしとヒロインのアリシア様が転生者ってどういう事なのでしょうね?神様がいらっしゃるのならばどういった意図でわたくし達を転生させたのでしょうか?
神様に聞けるものならば聞いてみたいですわね。
「あれを俺が好きになると思うか?」
「...強制力がどう働くのは分かりませんから現時点ではなんとも...」
「断言出来るぞ!絶対好きになる事はない!」
現状で見る限りはレンの最も苦手とするタイプではないかと思うのですが、ヒロインに接触すれば強制力やら何やらが働いてヒロインの虜になる可能性が捨てきれない以上油断は出来ません。
イベントが起きる強制力はなさそうですが。
「あ、そういえば」
ここに来て思い出しましたわ、アーレン様の第2イベント!
「明日の朝、第2イベントが起きますわ!」
そう伝えましたらレンの目が一気にどんよりと澱んでしまいました。




