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福 物語 〜中学生編  作者: 真桑瓜
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クラス替え

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福は中学二年生になった。同じクラスには横山、小柳、ひょうきんな山本もいる。

でも一番嬉しかったのは山根がいたことだった。

「また一緒になったね」と山根は言った。

「店のオープンの時には、来てくれてありがとう」

「福君のお母さん、お料理上手ね、うちのお母さんも言っていたわ」

「そうかな、いつも食べてるとわからないけど・・・」

「お店のデザイン、福君がしたんだって、とっても素敵ね」

「ありがとう、店の名前を決めたのは妹の多恵なんだよ」

「オハヨ〜」小柳が教室に入って来た。「福君とは初めて一緒のクラスになるね〜」相変わらずのんびりとした話ぶりだ。

「おはよう、よろしく!」

「小柳君とは一年のとき一緒だったのよ」山根が笑った。

「おッハロー」山本も来た。五分刈りの頭が青い。昨日床屋に行ったんだ、と言った。

「おっ、みんな揃ってるな、剣道部は四人か」横山が詰襟のホックを外しながら入って来た。

「先生が来たら留めるさ」


始業のチャイムが鳴って担任の野々村先生が入ってき来た。三十代のスリムな男の先生だ。白い線の入った緑のジャージを着ている。

「今学期からこの学校に赴任してきた野々村だ、数学を教える、よろしく頼む」教壇で先生は頭を下げた。

「俺のモットーは『何事にも拘らない』だ。だがあまり厳密にやりすぎると、拘らないことに拘ってしまうから困るけどな」

みんなはドッと笑った。

「難しい事を言うみたいだけど、世の中は矛盾だらけだ。それをどこまで許容できるかでその人の優しさが決まる、わからないことは無理に答えを出そうとせず、保留しておくほうがいい。数学の問題みたいに必ず答えがあるとは限らないからな」

福は、野々村先生が好きになった。


昼休み剣道部の四人が福の席の周りに集まった。

「新入生を剣道部に勧誘しなければならんが、どうやるかな?」横山が言った。

「公民館の坂本や岡本は剣道部に入ると言っていたけどね〜」

「問題は、初めて剣道をやるやつらをどうやって集めるかだ」

「昼休みに、一年の各クラスを回って演説すればぁ」

「そうだな、先輩達はそうしていたものな」

「今度、部活紹介があるだろ、そこで何かパフォーマンスをしたらどうだろう」福が提案した。

「どんな?」山本が訊いた。

「例えば、日本剣道形をやるとか」

「弱いな、もっと他にないかなぁ」と横山。

「寸劇はどうだぁ。可愛い町娘が、悪者共にさらわれようとするところを、正義の剣士が救うとか、そこで剣の立ち回りを披露するんだよ」

「それ面白そう」山本は乗り気だ。

「だけど町娘がいないよ、剣道部には女子部員がいないから」福が言う。

「山根さんに頼めば〜」

「そうか、じゃぁ正義の剣士は福がいいな、俺たちは悪漢をやる」横山が悪戯っぽく言った。

「ダメダメそんなの嫌だよ、僕・・・」福は必死で抵抗する。

「小学校の時、犬から山根を守ったじゃないか。みんなどうだ!」横山が勝手に決を採る。

「賛成!」全員が賛成した。

「決まりだな。今日、主将に相談してみよう」横山は満足げに頷いた。




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