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予期せぬデータ

真由美も楽しくなったのか、自分が飲むためのお酒をグラスに注ぎ始めた。そこに加わるようにして春香も来た。

「しゅうちゃんだけじゃないんだね。」

「川城探偵事務所の村上といいます。」

「私は古谷春香です。一応会社員なんです。」

春香にとって会社に勤めているのはスナックに勤めるための研修にしか思えないのだ。スナックもまた人間関係があったのかもしれない。それも知っているこそのこともあるのだろう。伝わっているのか、笑顔を見せていた。

「川城っていう名前はしゅうちゃんから聞いたことがあるんです。一番長く働いていた探偵事務所だって。川城尚子っていう所長さんがよくしてくれたって。」

「所長にとって笹田は大事な人なんだよ。笹田っていう刑事との仲もあったからね。」

「あぁ、あっちゃんのこと?」

彼女は明光のことも知っているのだろう。当たり前のことを言うように言った。明光はたびたび此処のスナックに訪れるのだという。養護施設の職員をしているのにこんなところに来てもいいのかと聞いたことがあるほどだというのだ。

「あっちゃんはね、根っからの刑事で正義感が強いのよ。それが刑事をしているときにあだになっているのを知っているから余計なことは言わないようにしているって話よ。」

明光が刑事としている意義を問うこともなかったのだという。刑事でいる時に起きていたのは刑事部長とぶつかってしまったことくらいなのだ。それでも権力にあっけなく負けてしまう組織なのだと知ってからも思うことがあったのだ。権力に負けてしまって恩恵を受けるのは限られた人になってしまう。

「それだと正義感を振りかざしたところで全く役に立たないからって。今はやめれてせいせいしているといっていたのよ。・・・現実を知ってしまって後悔したところみたいよ。」

「そんな人でもあるんですね。後悔。」

「誰だってあるわよ。私だってろくな旦那じゃなかったから結婚なんてするべきじゃなかったと思ったのよ。それでも春香は生まれていなかったわけだし・・・。簡単に後悔しているみたいこと言えないのよね。」

真由美はそうつぶやいた。春香の前だったこともあってか、言葉を選んでいるように見えた。かすかに映りこむ後悔というのは目に見えるものであるとは限らないのだ。悩む姿を見せぬようにして動いているように見えた。

「俺たちはその手助けをしているだけに過ぎないんだからな。村上、舞い上がった考え方を少しでも持つようになったらダメだぞ。」

「わかっているよ。」

頭でわかっていても何処かでそうはならないことだってあるのだ。

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