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恩恵の在り方

「割と苦労させているんだって実感もしているからね。口を避けても言えないことも多いの。」

「真由美さんは気づいているからいいんですよ。・・・俺のところに来る人で時々気づかないままにしている人もいるんです。子供のことはほったらかしにしたままで自分のことを考えている人が・・・。」

村上は怒りを沈ませるように言った。そういう人はたいてい家族のことで悩みを抱えていたりするのだという。隠すことも下手な人が多いこともあってかばれてしまったりするのだという。親であったならば子供を捨てることも考えてしまうほどの人なのだという。

「当たり前っていう概念を作り上げてしまったらダメなのよ。何処かでゆとりを上げる時間なりを作らないと振り返らなくなってしまうのよ。」

彼女が熱心に話をしているとドアの鐘がなった。2人が振り返ると黒のスーツにハイヒール姿の若い女性が入って来た。彼女は客の2人のうちの1人を見つけるとにっこりと笑った。

「来ていたのね。しゅうちゃん。」

「まぁね。春香ちゃんこそ、仕事は終わったのかい?」

「そうよ。上司のくだらない怒りなんて放っておいてかえって来ちゃった。そしたら、しゅうちゃんがいるんだもの。うれしいわ。」

春香にとってきっと3人が来てくれるのがうれしいのだろう。ドアには小さな看板がつけてあるのを見てかえって来たのだとすればわかっているはずだ。彼女はそう言い残して家の中へと入っていってしまった。

「面識があるのか?」

村上は少し驚いたような感じでいった。

「真由美さんも依頼者だったからな。旦那のほうがろくでもない男だったんだよ。そこから出口を見つけてあげただけさ。・・・此処のスナックから紹介されてうちに来る人もいるんだ。だから仲介料は払っているんだ。」

それが彼らなりの付き合い方のなのだと思った。救われた部分があるのならばそこに付け込むことを考えないのだろう。知らないこともあるのだろうかと思ったのだ。2人の眼の前にはワイングラスに入ったワインがあった。

「新しいワインは何処かで入れておくわ。」

「頼んだよ。そうでもしないと何か返せないだろう。」

「そんなことないわ。十分返せているわ。此処に探偵と弁護士事務所ができると聞いたときは驚いたもの。警視庁のおひざ元でそんなことをする人がいるんだって。」

スナックだからといって悪乗りをする人も少ないがいたというがそれは今は全くなくなってしまったのだという。弁護士事務所の下にあることもあるのだという。

「遠目の恩恵っていうところかしら?」

「そんなことで済んでいるのか。」

「案外そんなものよ。」

真由美は楽しそうに笑った。

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