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白い春

「村上、そういうことも話したいからいい場所で飲まないか?」

「いいぞ。所長はお前に弱いからな。」

「そういうことだから2人とも済んだらくればいいさ。」

宗がそう告げるとわかり切っていたかのような笑みを見せた。彼らには訪れる場所を知っているのだろう。落ち着ける場所なんて心を許さない限り生まれては来ないだろうから。特に弁護士や探偵といった何処か秘密主義がひた走るような職業にとってはこの上ない場所でしかないのだろう。

「どうせあそこだろ。・・・まぁ、資料を読むしか対策がない俺にはもう少ししたら向かうさ。奏斗はまだできていないのか?」

「そこそこできているし、納期が融通が利くところだから構わないよ。けど、きりがいいところまでやってからにするよ。」

2人の答えを聞いた宗は首を縦にうなずくと村上を連れて廊下に出た。古びたビルにも愛嬌というものが存在するらしく計り知れないものを感じてしまうのである。だからといって何かを起こすというものではないのだ。時の経過とともに忘れ去られてしまったものもあるのだろう。階段を降りるといったん外に出た。最初に来た時には気づかなかったがそこにはスナックがあった。

「お前がいい場所って此処か?」

「そうだ。スナックだけど、何処か心地がいいんだ。ママとは最初は依頼者としてあったんだ。そこからの仲だ。伊達な仲じゃないさ。」

宗はそういって重そうに装っているドアを開けた。

「ごめんね。まだ開店していないのよ。」

申し訳なさそうにいった女性は現れた男性を見たとたんに笑顔になった。それくらいに信頼関係を築き上げているのだと村上はわかった。

「キープを開けてくれるか?」

「わかってるわよ。それで2人も来るの?」

「来るってさ。」

彼女はそう聞いた途端に入口のドアにかけているらしい看板を裏返していたようだった。それは大切に思われている証だと思った。

「あら、彼は初めて会ったわね。私は此処のママをしている古谷真由美っていうの。」

「俺は川城探偵事務所の村上です。」

彼女は同業者を連れてくることはあまりない宗の行動は彼を信頼しているのだと思った。宗のキープボトルはワインだった。だからといってコレといったこだわりがないのか決まったものではないのだ。村上は名刺を取り出した。

「あら、もらっていいの。」

「はい。」

「こんな胡散臭い職業を理解してくれる人なんて少ないですから。」

村上の言葉に少し真由美は笑った。笑ってごまかしたに近いだろうか。

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