捜索
所長は村上の痛いところをついたにも関わらず素知らぬ顔をしていた。
「所長、俺だって調べているじゃないですか。」
「それでも笹田君には足元及ばないわ。だって彼の動きは探偵と刑事が混じっているもの。情報を得るのもうまいとなれば村上君がやっているのは浮気調査が向くのよ。」
所長は数年だけと言えどもいたときの行動を見ていたのだ。探偵とばれるのは恐れた動きをしてしまったのならそこまでになってしまうのだ。村上にはそこまでの行動がないのだろう。
「今や個人事務所の所長でしょ。」
「所長じゃないですよ。共同経営にあたるんですから。」
「そうね。白浪君は弁護士として優秀と聞くわ。あそこまで育てたの?それとも元からの能力なの。」
ずかずかと聞いてくる所長に対して笹田は所長をにらみつけるようにしていた。答えなくなかったのだ。答えたところで何処かで利用されてしまったら困るからだ。他の弁護士事務所からも声がかかわっていることも承知の上だからだ。それを白浪が断っているのもわかっているのだ。
「彼のことは知りません。俺とあいつは高校の時の同級生だっただけで、俺が事務所を開くといった時に同じように開くといったので共同経営にしただけなんですから。」
「貴方はあまり語らないわよね。まぁ、こっちもほしい情報があるから事務所としてかかわっていくわ。村上君はそこまで役に立たないと思うけどお願いするわ。」
所長はそういってコーヒーを飲み干すとそそくさと出て行ってしまったのだ。彼女も痛いところを突かれるのは困るのだろう。探偵をしている以上近寄りがたい情報もあっても可笑しくない。テーブルの上には所長の名刺が置いてあった。
「お前が受け取っておけよ。一応契約成立ってことじゃないのか?」
「違うよ。仮契約に過ぎないよ。キチンと契約書を結ばないと俺も納得しないし・・・。」
「そうか。」
名刺には川城探偵事務所所長と書かれていた。川城尚子ともあった。川城という名前は検事にもいる。川城尚子は検事一家の1人娘だった。そこで検事として働いていたが、尚子がかかわった事件に冤罪事件にかかわってしまったのではと思いが起きてそこからすぐにやめたのだ。弁護士になるという手もあったが、そこまでなるつもりもなかった。
「検事一家で暮らしてきた中では疑いはなかったんだろうけど、もし冤罪だったらと思うと良心にも痛かったんだろうな。」
「その事件は結局解明されぬまま、闇に埋もれたままになってしまっている。」
悲しみに暮れた彼女を救ったのは人探しという方法だった。




