橋を架けた後継者
「確かにお前相手にするなんて馬鹿な手は打たないよ。ただな。所長がやけに気にしているんだよ。笹田が事件の内容によっては危ないとかってな。」
「あの人は考えすぎなんだよ。俺はそんなことはない。」
コーヒーを頼んでいたので店員が届けてきた。内容が聞こえたのか、何処かやり場のないような感じになってしまったのだ。それを感じ取ってしまったことも2人にとっては変な感じになってしまった。悟られないようにするのが主体の探偵にとってばれてしまっては困ることが多いからだ。
「村上は主に浮気調査をしているだけあってやっぱり向かないんだな。こういうことに・・・。」
「そんなことを言うなよ。俺だって浮気調査以外もやっているけどな。それでもダメだよな。」
村上はコーヒーに真っ白になるくらいにミルクを注いだ。その注ぎ方は全てを注いでしまっているように思えた。それでもそれが彼の飲み方なのだということなのだ。宗はブラックのまま最初に飲んだ。苦味と甘味と酸味が会いまったおいしいコーヒーだった。きっとコーヒーマシンが注いだのだとしても豆をその時にひいていると思った。
「お前にしてはコーヒーがうまい店を見つけたな。」
「だろ。俺も野暮用ばっかりしていると嫌になるんだよ。それでもうまい店が見つかったらそれで丸く収まるってものだよ。」
村上は嫌なことを吐き出しすぎてしまったのだろうかというほどに漏らしていた。抱え込んでしまったのは、きっと今に始まったことじゃないのは知っている。知っていることを改めて知らされた気がしてしまった。それは否が応でもしなければならないことになってしまっているのだ。嘘に塗りつぶされてしまった世界にしたのはきっと愚かな大人たちに過ぎない。子供は不随しているだけとも思ってはならないのだ。あっさりした顔をしている村上は綺麗な世界を見ていただけのようにしているのだ。
「まぁ、お前がいなくなった時には変わらないこともなかったさ。重い事件を追ったりすることもあるけど、死んだとはいえ総理大臣がかかわっているとなると一筋縄ではいかないぞ。」
「それくらいは知っているさ。総理大臣になりたがっていたというよりは周りに押し上げられただけに過ぎないんだよ。」
「増岡康太がか。・・・テレビを見ているとさも自分がやりたかったんですみたいな顔をしていたのにな。本心は違ったというのか。」
きっとそのような顔つきになったのは最初からではないはずだ。持ち上げられていることは知っていただろうから。




