笑う烏
吉田の眼には彼らが一体何処に血のつながっていないとか構わずに人のために動いている姿を見せたのだ。誰が血のつながりが家族だと安易に決めつけてしまったのだろうか。ふと思ってしまったに過ぎなかった。
「吉田さん、受付お願いしますよ。だって、俺の担当を代わってしまうんですから。」
「いいじゃないか。笹田が来たんだから。」
「しょうがないですね。」
そういって彼は去っていった。宗はその姿を一部始終を見ていた。吉田は悪気ない顔をしていた。そこには正しいことをしたのだという感じに過ぎないのだろうと思った。
「またくればいいじゃないか。俺は待っているよ。」
「じゃあ、また来ます。」
宗はそういって刑務所を出た。来た時とは違う晴れやかな気持ちでいた。刑務所の外で待っていたのは見慣れた顔だった。
「村上、なんだ。見張っていたのか。」
「なんだってどういうことだよ。・・・もしかして、知っていたのか?」
村上はそこまで器用な人間ではないことは知っているのだ。村上はきっと検討をつけてきただけに過ぎないのだ。たまたまあったに過ぎないのだということもわかっていたのだ。
「お前が来るとしたら俺が帰った後かはたまたこういうときくらいだ。お前は浮気調査が主体だったわけが分かるよ。」
「そんな話をするためにお前と落ち合ったわけじゃないんだ。だから、何処かでコーヒーでも飲もうぜ。」
村上はきっと仕事が休みなのだろう。行きたい場所が決まった故で誘っているようにしか思えなかった。それが彼らしい部分でもあったのだ。素人目にはわからないが、同業者では悟られてしまうという部分もあるのだ。村上は電車に乗って街中まで戻って来たのだ。少し騒がしい喫茶店へと入っていった。席へと座るなりすぐにコーヒーを頼んだ。
「お前が此処まで俺を連れ込むなんてわけがあるんだろ。」
「笹田が追っている事件には増岡がかかわっているって聞いてな。よっぽどのことだと思ったが、まさか久保田までつながっているとなるとどうなっているんだ。」
「いくら同じ島だとは言え、言えないことは事実だよ。増岡康太がかかわっているのは確かだ。」
宗は口を濁すようにしていった。それでも隠しとおすなんて立派なことはできないのだろうからとなる。村上は何かを企んでいるとでも見えるような顔をしていた。
「お前のことだ。そう簡単に口を割るわけないよな。」
「探偵ごっこをしているつもりなのか。探偵の探偵をするのは伊達な奴がするものじゃない。」
彼は知っているというように笑った。




