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変わるもの

久保田が見た姿は落ち込んだ姿だったという。何が何でも引き込もうとする心意気は全く通用しなかったという。

「俺も通用するなんて思ってもいなかった。あの人は自分の定義についてははっきりしていて動揺する様子もなかったんだよ。」

「その人の名前を知っていませんか?」

「高橋とかいっていたな。高橋何とかとかいってプログラミングの知識をもっていてそれで手助けになるのなら乗り気になるが、そうじゃなければ受けないという感じだった。」

それでもあきらめなかった人物がいたのだという。その人物を落とした人物がいるらしいという話だけは聞いたことがあるのだという。彼にとっても驚きを隠せなかったのだ。簡単に落ちる人ではないのはわかっていたのでそこで落ちたと知って驚きを隠せなかった。

「増岡康太がかかわっていると知ったら驚かないよ。だって、ベンチャー企業をしていた時ですら父親の名前を出して動いていたとかいう話だからな。その裏には最も頭がいい人間がかかわっていないとそこまでしないような気がするんだよ。増岡はあくまでお飾りの王様に過ぎなかった感じだよ。」

増岡はそれを知っているのかどうかすらも危うかったのだという。その危うさを悪用されることが分かっているようにも思えた。悪知恵をもっている人物が身近にいればいるほど信じ切ってしまうものなのだというのを知っていたのだという。

「ベンチャー企業をしたところで金にならなければ困らないだろう。だったらなんでもよかったじゃないのか。だってさ、増岡は普通の会社員じゃ務まらなかったという話があったほどだからな。」

増岡康太はもともとはベンチャー企業を起業したかったわけでもなかったのだ。ただ、その会社で犯してしまった大きな失敗を隠すために大きなことをしようとしていたのだというのが分かったのだという。しょせん、何処かでつじつまを合わせようとしているようにしか思えなかったのだ。

「大企業を務めても結局は営業もろくにできなくて業績を上げるわけでもなかった人間が売り上げを上げるはずがないとしか思われていなかったのだという。」

「そこで名前を隠すように使われていなかったんだと思ったんですよ。例えば、弟がいてその弟が全てを操っていたとしたら・・・。」

「弟のほうが頭がよかったらという考えね。それだったら可笑しくもないよ。だって、操り人形のように動いているようにしか思えなかった人間が急に変わるものじゃないから。」


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