枯れた罪
彼をあそこまで追い込んだのは会社自体だったわけだ。藤川正治は別段処分を受けるわけでもなく、逃げていったのだ。
「藤川さんって今、何をしているんでしょうね。」
「俺が捕まった時には死んだって新聞で知ったよ。殺されたとか書かれていたな。あいつにも月が回って来たとしか思わなかったけど・・・。」
藤川は死んでいたのだ。殺された疑いが浮上したこともあって警察は事件のことを調べたのだという。殿山製薬はその時には警察には黙っていたのだという。不祥事はばれたとしてもその行動を問いただされたりしなかったのだろうか。
「藤川が死んだときの葬式に出たけど、厳かという感じではなかったな。むしろ、死んだことを祝っているようにしか見えなかったな。」
「死んだことを祝うってどういうことですか?」
藤川は兄弟の中であまりよく思われていなかったのだという。たった1人だけ親のコネで就職したのだ。他の兄弟は自力で入ったのだというが、それすらもバカにする姿しかなかったのだという。薬品会社ということだけあって危険だといって止めても聞かなかったのだという。
「やめた後に薬品で謝った使い方を促した所為で人が死んだことを笑いごとのようにしていっていたんだってさ。人が死んだのは後の始末は会社に任せて別の会社にいったなんてほざいてみろ。やめろって言われるだけだ。」
薬の扱いを教えてしまうこともなかったのだ。そのこともあってその薬の許認可が下りなかったのだ。人生を変えてしまった人だっていることもわからないのだろう。時間がかかったが故に救えなかった命があったのだと思った。
「藤川はそれすらもわからなかったんだよ。コネで入ったから少しくらいはかばってくれるとばかり思っていたんだろうな。」
「飛んでもいない輩ですね。」
「見た目は普通のサラリーマンなんだけどな。中身が腐っていたとしか思えなかったな。」
彼の葬式ではその話が尽きなかったのだ。人殺しが死んだのだといわれていたほどだった。それをいったい誰が殺したかまではわからなかったのだという。
「兄弟もそんな奴の遺産をもらうほど卑しくないとかいって誰も受け取らなかったんだとよ。せめて、後悔でもしてくれていたら救いようがあったんだけどな。」
久保田はつまらない話をこぼしているようだが、何処か山田の死とつながっているようにしか思えなかった。藤川は何処かであったのだろうか。コネで何かを得たと思ったのだろうかと思った。




