失踪した声
殿山製薬が死者を出すような事件を起こすとも思っていなかった。
「あの事件がなかったら少しは違ったと思っているんだ。」
「どう変わったといえるんですか?貴方がやっていることは明らかに犯罪だったわけですよね。」
「横領なんてしていなかったんだよ。殿山製薬が海外の薬を輸入をしてろくに危険とかそういうのを当時の担当者が調べなかったんだよ。売れそうな薬があれば輸入をすることを大事にしていたからな。」
輸入を主に担っていた担当者はそれを知ったとたんに会社を逃げるようにやめてしまったのだという。そのことで起きたのは誰が責任を取るのかということだったのだ。営業マンとして成績が良かった久保田になってしまったのだ。
「俺を選んだ会社はまるで標的をしているのが感じたんだ。俺はあくまでも営業をしていただけで何もなかったにも関わらずだ。」
会社は標的を見つけたときの動きがすごかったのだ。それからだったのだ。久保田の評価は以前の評価を得られなくなってしまったのだ。そうなると金が足りなくなってしまったのだ。それを埋めるために考えたのが横領だった。会社が久保田を標的にしたことで生まれた横領だったのだ。
「俺は関係ないといってもマスコミは来るだけで、広報も全くといっていいほど安易に受け入れてしまうんだよ。うんざりしかしなかったのだ。別の奴が受け入れてそいつのほうが詳しいはずだといっても聞き入れなかったんだよ。決まったというような態度ばかりで精神的にやられてしまっていたんだ。」
それが終わって数年後だった。不倫がばれてしまったのが・・・。静かに暮らしたいという希望がかなわないのだとわかってしまった。支えてくれていた妻が探偵を雇っているらしいこともわかったのだ。その時にマスコミの邪悪さを思い出してしまった。それで事務所を燃やして証拠を消してしまえばなかったことにできるのではないかと安易な考えを思い出してしまったのだった。
「本当はあの時の暮らしを守りたいだけだったんだ。・・・会社じゃ悪者にされたままで営業をすることなんて嫌になっていたから。その時に逃げた奴は大手の製薬会社の営業として忘れてしまったように働いているんだよ。ことの発端なことすらも忘れてしまったとでもいうようにな。」
「その人にも罰を与えようとは思ったりしたりしなかったんですか?」
「思ったさ。・・・けど、ちっぽけなことだとしか思えなかったんだよ。」
放火をしようとしたのを止められてよかったと思っているのだという。久保田なりの手前で止めてもらったのだ。




