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つぶやく鳴き声

久保田の甘い考えが続くわけではなかったのだ。それでだろうか、全てにおいてあきらめをつけてしまったのだろう。

「会社の金を横領をした過去がある前科者を取りたがる会社はまぁないよ。不倫はよくないけど、それだけで止まってしまっていたらよかったんですけどね。それに加えて放火未遂まで犯しているとなると嫌がる企業しかいないだろうな。」

無期懲役になったとはいえ模範囚になった場合は少しでも社会に出られる可能性が生まれてしまう。模範囚だからといってもよくは思ってはくれないだろう。そこで新たな事件を起こしてかえって来る連中が尽きないのだという。

「此処で更生したからといっても社会は受け入れてはくれないものなんですよ。少しでも後悔というものが分かる人なら受け入れてくる人もたまにはいます。ただそれはごくまれだといってもいいかもしません。」

「それを知っているからこそ久保田は出るつもりがないのかもしれないですね。」

彼はうなずいていた。準備ができたのか、その男性は少し席を動いた。そのままでもいいと思うこともあるのだがそれでも前と進むための道を作っているのだと改めて思ったのだ。

「準備ができたので面会室に向かってください。・・・じっくりと話すべきだと思います。いくら探偵だとはいえ強硬策に及んだ犯人です。はっきり言うべきですよ。」

彼は面会室の番号と後押しをしてくれた。久保田と会うのは裁判所でしかあったことがなかったのだ。そこでろくな態度も取ることもなく裁判が終わったのだ。彼に面会するつもりなどさらさらなかったのだ。それでも事件にかかわることがあるのだとしたら会うしかないのだ。狭い面会室でただただ来るのを待った。ドアの鈍い音が鳴った。のろのろとした動きでグレーのスエットを着たやつれた顔をした男性がパイプ椅子に座った。

「久しぶりだな。笹田さん。」

「まぁ、最初の挨拶はそんなものですか。久保田さん。」

薄ら笑いをする男に抵抗するのは時間がかかるうえに精神がいかれてしまうのでやめてしまうのだ。

「それにしても笹田さんは今もまだ探偵ごっことやらを楽しんでいるんですか?」

「ごっこという呼び方は気に召さないですね。貴方の行った行為が奥さんに疑われたことであって、俺の事務所はきちんと国に認められているからごっことは言えないんですよ。」

「そうですか。・・・俺を此処に入れた謝罪にでも来たのかと思いましたよ。俺は放火未遂もしていないのに、ビルの大家に見ていたこともあってかそれも加えられて無期懲役。冤罪じゃないか。」

「たわごとを言うことしかできなくなったのだったら寂しいものですね。・・・貴方を味方をしてくれる人は裁判をしたときにいなかったじゃないですか。」

笹田がその時、起きたことを言うと久保田は黙り込んでしまった。

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