増やした答え
吉田は何故此処に来たのかとは聞かないのは言うとわかっているからだろう。
「笹田がまさか親になるとは思わなかったな。」
「そうなんですか?」
「根っからの刑事バカっていう人間だったからな。上司と気に食わないことがあっても立ち向かっていたのは事件の解決するっていう熱意に押されるものがあったんだけどな。」
その熱意を受けて調べるものも多くいたこともあって上司は何もいえなかったらしい。事件を解決することで警察の威厳を保つことができると分かっているからだ。
「そんなことより会いに来た人間は?」
「久保田陽介だ。放火しようとした人間だよ。不倫をしてもなお、何も感じなかった人間だ。」
「まさにだな。」
彼はそういって面会用に使用される紙を取り出した。面会をするためにはいろんな事情があるものだとなるのだ。吉田は書き方を教えてくれたのだ。何度も何度も書き方を教えていることもあってお手の物といったところだろうか。
「待っておいてくれ。会わせる段取りをしてくるよ。」
「吉田さんが久保田の後ろにいるんですか?」
「あぁ、面倒を見ているっていうと聞こえがいいが、刑務官でしたがってくれる奴が久保田は限られているんだ。ある種の問題児だよ。・・・結局は模範囚とはならずにそのままいるんだよ。」
久保田は見かけた相手に対して喧嘩を吹っかけたりしていることもあったのだ。それによって無期懲役で少しばかり出られる期間があるのにそれすらも無駄にしてしまったのだという。
「久保田は仕事をできなくて不倫をしたうえだからこそ、全てを捨てたものとしか考えていないんじゃないか。出世ができるわけでもないところに来てしまったわけだからな。まぁ、このまま過ごすつもりなんだろうよ。」
久保田にとっては出世のための一大決心といったところだろうか。営業での功績も見てもよかったというほどなのだから。他の人がうらやむような状態だったのだ。それを捨てるようなことをしたのだと刑務所に入ってわかったのだとすれば全てが遅すぎたのだ。
「呼ぶまで待っておいてくれ。準備をしてくる。」
吉田は此処の刑務官の中ではなかなかの歴を持っているのだ。だから、ある程度の人物の後ろで黙ってみていることもあるのだという。口が堅いということで選ばれることもあるのだ。これまで心を痛めつけられたこともあっただろうが、それすらも感じされないこともあったのだ。それほど強い人なのだと心底思ってしまったのだ。




