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あきらめた気持ち

「俺もあってみてもいいかもしれないな。裏社会に入ったとはいえだ、轟は元刑事だ。警戒してしまっては元も子もないからな。」

「探偵なら大丈夫だって言えるのかよ。」

龍哉は心配したのか、少し張り上げた声を出した。奏斗もそれに加わるようにして声には出さないが、じっと見つめていた。彼らにとって宗は此処を作り出した第一人者であり、大切な人であることは違いないからだ。

「俺が伊達な人間じゃないことくらい、お前が一番知っているだろう。・・・危険な目に遭ったこともあったがそれでも逃れてきたんだ。嘘じゃないさ。」

「誰も嘘をついているだなんていってませんよ。それよりも宗さんが危ないことに巻き込まれるのが嫌なだけなんです。増岡勉は政治家を辞めたとはいっても操っている人間がいても可笑しくないんです。」

「そこまで危険なことはしないさ。ただ探りを入れるだけだ。弟のことを黙っているなんておかしくないか。それを誰も聞かないのはどうなのかとも思ってしまうんだよ。・・・自分の息子をないがしろにしていることがあると思っている。」

宗にとっては増岡勉の行動が信じられないのだ。実の息子が死んでいようと構わないと言いたげなほど自分の政治家人生をかけているようにも見えたのだ。増岡はそれでも政治家として続けていたが、粘るということはあまりせずにあっけなく辞めてしまったのだ。それに疑問を問う他の政治家がいたのだが、大御所といってもいいくらいになっていたのであまり声を上げることはなかった。息子のことを聞くこともやめてしまっているようにも思えた。週刊誌も大きなことに巻き込まれてしまうことを恐れているようにも見えた。

「お前は恐れてしまうことがないんだな。」

「恐れたところで何が解決するんだよ。むしろ、放置して悪化させてしまったら困るだろう。」

龍哉はそっというしかなかったのだ。増岡に会うことはまるで決まっているような態度をとっているのを眺めているしかできないのだろうと。奏斗はパソコンにばかり向き合っているよりも大切なことが分かっているのだ。

「龍哉、奏斗が心配するような危険なことをするつもりはないさ。世間話をしているふりをして聞き出すだけだから。」

「お前はそれがうまいから身辺調査を任されていたんだもんな。変なところで心を開かせるのがうまいっていっていたから驚いたよ。」

彼は探偵の歴を知っている分、信頼も増すのだろうと思うのだ。彼の言葉を信頼するしかないとあきらめた。

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