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走るカゴ

宗はそっとパソコンを開いている。そこではサンズでの潜入を成功している人物とコンタクトを取りたいのだという。その人物はサンズに対してよく思っていない人の近くにいたこともあって、その人を助けることにつながることになるのならといって動いてくれている。

「入ったばかりだから話が流れてくるとも思えないんだけど。」

「時間はかかるだろうな。でも、誰かといれば必ずといって聞こえてくるものなんだ。無音な状態なんてありえないから。」

「そうなのか。」

彼が見たパソコンには収穫なしと書かれたメッセージが目に入った。それでも期待値というのはあるものなのだと思った。増岡が死んだことで弟がすっと上がってくるとは思えない。むしろ、名前を変えたまま生きているのだとしたらかなりの強敵と化してしまう。それでも戦う準備だけは整えておかないとダメなのだ。

「即座に確信を突こうとしたらダメなんだよ。ばれてしまってかえって警戒を強めるだけになってしまう。時間をかけるのもまたいい方法なんだ。」

「宗はそうやって来たんだろうから。下手なやり方をしてばれてしまうのが嫌だからな。」

「俺も前川総一郎について調べているんです。前川総一郎と検索すると前の人のことが多く取り上げられてますね。」

前川が声を上げてしまえば一発で増岡の弟だとわかってしまうだろうが、そんなことをするとも思えないのだ。今築き上げているものをなし崩しになってしまう上に関係性までも切ってしまうのだ。そんなかけのようなことをする人はないだろう。むしろ、稀なほうで出会う確率のほうが低い。裏社会ではそれをネタに金を巻き上げる連中も生まれるくらいなんだ。何と取引をしているのかすらわからなくなってしまうのだろうか。

「名前で調べずに写真で探したほうが速いかもしれないぞ。そのほうが写真で騒ぐから余計にその人もばれまいとするだろうな。いくら計画的な人でも間違いを犯すものなんだよ。」

奏斗は写真に切り替えて捜し始めた。その作業もきっと単純なことが絡んでいないようにしか思えないのだ。写真が出回ることで警戒を強めてしまうかもしれないが、調べているものはあまり使っていないものをやっているのでわからないだろう。

「龍哉は裁判の資料を読みこんでいるのか?」

「そうだ。それしかないだろう。サンズには此処数年で裁判の履歴を残しているんだよ。そこに山田剛三が入っているものもある。北見さんのようにパワハラを受けたとして訴えているんだよ。」

過去にも同じことをしていたのだ。

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