測り切れない定規
轟は警察としての威厳だと言い張った上司にがっかりしてしまった。それの何処に威厳とやらがかかわっているのだろうか。組織のために権力に屈したとしか思えなかった。
「やめたところで変わらないのは知っていたからこそ、裏社会で生きているんだよ。漏らされて困る情報をもっている人間を捕まえてしまうと記者とかに会った時に言われたら困るんだ。」
「増岡も殺されたってことは父親に会ってみるのも手かもしれないな。政治家を辞めて隠居しているといえども立場は持ったままだろうな。政治家ってせいぜいそんなものだ。俺はそこも当たってみる。」
「お願いします。」
奏斗はパソコンから目を離した。パソコンの画面は真っ暗になってしまっていた。奏斗は立ち上がってお辞儀をした。
「奏斗、心配する必要はないさ。・・・他の奴は心配する奴はいるけどさ。まぁ、調べたら知らせる。」
轟はそういっていなくなってしまった。宗はそのまま窓を眺めていた。高橋小太郎と石堂あかねの死が全てつながっているのだとしたら根本から探らないと見えてこないのだ。
「増岡康太が死んだとなればそこに牛耳っていた弟も動き出す。彼は黙ってみるほどじゃないだろうからな。全ての計画を立てたうえに関係ないという顔を張り付けている。そんな奴と戦うんだ。」
「手ごわいっていうことか。勉にとって政治家になってほしかった弟ではなく、兄の康太にやらせたのは言うことを聞く上にもし反感を持ったとしても言い返せない何かを抱えていたということになる。それも公になっていない内輪で済んでしまっていること。」
「龍哉に調べることは難しいか?」
増岡康太が抱えていたものを見つけることも事件を解決する謎になってくるだろう。増岡が殺されたというのはやめるなりいったとしか考えられない。深い感情をもっているというよりかは駆け引きに巻き込まれているような印象も強かったのだ。
「そりゃできるさ。増岡がベンチャーをしていたのなら少しの期間でも顧問弁護士をもっていても可笑しくないからな。弁護士っていうのは漏らさないっていうのはあるだろうが、愚痴程度にしてもらえるだろうな。」
「そうか。」
「宗は何を調べるんだよ。」
サンズのこともあったりして調べることにあふれかえってしまっている。それを軽くでも割り振ったのはそうでもしないと動けないからだろう。いくら頼んでいる人がいたとしても譲れないものをもっているのだ。確信をつくようなことはあってならないといって距離を取らせることだってあるのだ。




