浮かぶ夢
「笹田はもっぱらエース刑事と呼ばれるのは嫌がっていたな。自分の立場を上げたとしても人を救えたわけでもないからな。・・・捜査一課に配属されていた理由もよくわかるよ。」
轟は刑事になりたいという思いでやっていただけだった。そこで運よく配属されたが捜査二課といったところだった。2人には何処か違うところがあったのだ。捜査一課と二課というと交わらない事件のほうが多いがそれでも出会ったに過ぎないのだ。
「笹田は会ったとたんにいったんだよ。青臭いとされる理想論だよ。俺はそれを久々に聞いたと思って笑ってしまった。それでもあいつはいったんだよ。かなえるべき未来は沢山あるのにそれを安易に俺たちで売るのかってな。」
「親父はそんなことをいっていたのか?」
「そうだよ。刑事になっても結局は立場が悪くもなるのも承知で動いている奴だったから、仲間もついてくるんだよ。」
刑事部長だけは全くもって変わらなかった。だが、そこで笹田は何時破裂するかわからない爆弾を仕掛けておいたのだ。その爆弾が破裂したことによって刑事部長が変わっているのだという。
「お前の親父はそういう人間だよ。まぁ、意地を張ってばかりにしか見えないときもあっただろうがな。そんな親父だからお前も誇れるんだろう。」
「よくわかっているね。轟さん。・・・俺は親父のことすら探偵として探った。そうでもしないと俺の中で壊れそうになるのを保てなかったからだよ。親父はそれも知っていたけど、言わなかった。」
宗は探偵として動いている途中に笹田のことを調べた。そこで浮かんできたのはお人よしすぎるのではないかとも思ったことあった。警察官になりたかったのは正義のためだったのかもしれない。生半可な気持ちからくるものではないのは彼自身が分かっていたはずだと思ってやめてしまった。功績も聞きたければ本人に聞くべきなのだとも思ったのだ。
「調べるのはやめたんだよ。親父のことを探偵として調べることは汚すような気持ちになったんだよ。」
「笹田は調べられていることは知っていたんだ。・・・もともと本当の親子じゃない。認められるためにはそれくらいは引き受けたところで罰は受けないっていたんだよ。宗が納得すればやめるだろうし、知ってこそ考えが変わることだってあるってな。・・・俺は思わずいったよ。寛大だなって。あいつ、ただ笑っていたよ。」
轟がそれを知った時には宗はやめていたのだ。怒りよりも寂しさしか浮かばなかった。




