色の区別
「それにしても轟さんが地上に上がってきても大丈夫なんですか?」
奏斗が心配そうに言うと彼はそれを打ち消すかのような笑みを見せた。彼が着ている不釣り合いな服装はそのほうが声をかけにくいだろうと思ってしているのだという。厄介なことをしてしまわないようにと思っているのだろうがそんなこともないのだ。
「構わないよ。俺にとって警察は追わないんだから。裏社会の情報屋っていうのは戸籍を売買したりするのが多いが、俺の名前が挙がったとたんに来ないんだよ。・・・警察にとって都合の悪い情報をもっている俺や笹田を敵にした奴らの負けってところさ。」
2人はキャリアという立場からは程遠いところにいたがそれでも這い上がれるほどの場所にいた。その場所すら捨て今は裏社会で生きることにしている轟に驚いてしまう。彼はそこに落ちてまで後悔することはなかったのだろうか。
「そんなところにいたら奥さんはついてこないじゃないんですか?」
「そりゃ普通は来ないさ。だけど、俺の場合は刑事としての意地を見せたとかいって誇らしげだった。・・・警備会社なんて入りたくなかったんだよな。天下り丸見えになってまで誇りを汚すようなことはしたくなかったんだ。」
そこで得たのが情報屋という仕事だった。警察とつながった情報屋というのは少なからずいる。無法地帯のようにしているところほどいることを知っていた。そこにつながれるように交渉してみるとあっさり受け入れてくれた。
「そいつは腕が良いうえに警察からの信頼もあるが、裏社会とつながっているだけあって口は堅いんだよ。口が堅いほど信頼も多いってもんだからな。」
轟が警察をやめたことを聞いた彼はさほど驚いていなかったというのだ。事件の噂が流れていたこともあって彼はもしやめるというのなら引き入れようとも考えていたのだという。警察にいるだけでは感じられない権力とは違うものが感じれるというからだ。
「彼なりの誇りがあるってもんだよ。そいつは父親が刑事だったんだ。刑事だったことに誇りをもっていたが、その父親が警察によって殺されたんだよ。それを警視庁は隠した。」
警視庁はその事実をマスコミに漏らさないようにしていたが、どこかしらかその情報が漏れたのだ。真犯人を警察がかばっているのではないかと思われるようになってしまったのだ。
「マスコミが騒ぎだしたのを受けて事件を公表することにしたが、嘘丸出しの言葉だったために彼は警察を真実のをやめて裏社会に入った。そこで得たのは刑事同士で殺したってことだ。正した人間を悪く言うしかなかったんだ。」
彼の父親の正義を守るために裏社会に入ってそいつの情報を流すことにした。そいつは警察をやめざる負えなくなってしまったのだ。




