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悪しき時

龍哉は2人が本当に血がつながっていないことが信じらないくらいに親子の会話をしているのだ。宗は探偵という仕事を選ばなかったらきっと刑事になっていただろうと思ってしまうのだ。それほど清々しいほど綺麗な会話に見えた。

「養護施設の職員になった時はなんで刑事をやめたんだろうとか思ったんだよ。けどやめて正解だったって今は思っているよ。」

「親父、話変わるけど、前川総一郎って知っているか?」

「知ってるよ。前川は捜査二課の対象の人間だったんだよ。名前が上がる度に捜査をしていたって轟から聞いたよ。」

前川総一郎は会社を経営をしていたが、脱税を行っていることを従業員に知られてしまって殺人を犯したのだという。そのこともあって捜査一課の管轄でもあり、捜査二課の管轄でもあるような扱いをされるのだ。最初は前川について警察も追うことができたのだが、何時のころか追うことができなかったのだ。

「前川総一郎って今、名前を使っている人間がいるってことは偽名の可能性もあるってことだな。本当の前川はのんきに生きているってことになる。」

「今の総理大臣につながりがあるって言われたら驚くか?」

「驚かないよ。だって増岡はもともと裏での噂が絶えなかったんだよ。ベンチャー企業を経営をしていた時くらいから黒い噂しかなかったんだよ。兄弟がいるのに名前が上がらないのも不思議がっていたほどだ。」

増岡には弟がいるのだという。頭が切れるのはその弟のほうだというのだ。父親である増岡勉を口説き落としたのはその弟だという噂があるほどなのだ。

「勉は康太に政治家になることを嫌がっていたらしいんだよ。・・・もしなるとするなら弟になってほしかったらしいんだけど、その弟が康太に譲ったという話だ。学歴から何まで弟のほうが上だって思っていることもあって劣っていることをコンプレックスに思っているのを知っていたからだ。」

弟は政治家にならずに一般の企業に就職をしたらしいのだが、増岡康太がある事件を起こしてからまるっきり姿を見せないのだという。増岡康太が起こした事件自体も警視庁内で消されてしまったのかで上がってこなかったのだという。政治家である勉にとっては不祥事というのは力を使ってでも消したものだろうから。

「増岡のことを調べたときに聞いたんだよ。そのころ、住んでいた地域の人が勉がぼやくように言っていたってさ。康太には政治家になってほしくないって。器じゃないし、受け止めるほどの能力もないって。」

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