新しい世界
宗が探偵事務所を作った時に人手が足りないこともあって龍哉に声をかけたのだ。すると、今のいる弁護士事務所の居心地が悪いといってやめたいと思っていたのだと打ち明けたのだ。それを聞いた宗は納得をして同じ場所に事務所を構えることに納得したのだ。
「それより俺に頼んでいたことを忘れていませんか?」
「悪い。奏斗。」
2人の向かいの席でパソコンを格闘しているように見えず、むしろ簡単にやってのけてしまっていて暇そうにしている人物にいった。林奏斗はもともとは此処の事務所の依頼者だったのだ。他の事務所に依頼にいったらその会社との縁を気にしてか、協力的ではなかった。それで途方に暮れてしまった時にパソコンで調べたときに浮かんだのが2人の事務所だった。話を聞いてくれた時に断るつもりがないのが親近感がわいた。そして探偵として動く宗は全くといっていいほど頼りがいがあるようにも見えなかったのだ。それでも報告書が上がる度に実感がわいたのだ。しっかりと調べているのだと。裁判で戦ったこともあって他の企業も取りたがらなくなってしまったのだ。2人に頼みこむとあっさりといてもいいのだといわれたのだ。そして、今に至るのだ。
「まぁ、いいですけど。・・・裁判で勝てるのは俺も関わっていますよ。データをいじるのも面倒じゃないですけどね。あっさり明かしてくれるデータに感謝ですよ。」
奏斗はパソコンに向かってカチカチと音を鳴らしたのだ。彼には過去の特技で新聞やテレビに取り上げられるほどのものだったのだ。それすらも忘れたいと思ったこともあったが、今はそれで役に立っているのだと思った。そんな事務所にドアのノック音が鳴った。
「はい。」
龍哉が大きな声で答えた。すると恐る恐るという感じでドアが開いたのだ。ドアが開いて入って来た人は必至な顔をしているわけでもなかった。全てを終わってしまったというべきだろうか。むしろ、頼ってほしいというようにも感じなかったのだ。
「此処ってなんの事務所なんですか?」
「弁護士と探偵の事務所ですよ。ちゃんと届け出を出している正式な事務所ですよ。」
宗はそういうと壁にかけてある書類を見せたのだ。それを見た人はほっとしたのか、近くにあったソファに滑り込むように座った。
「それで要件と名前は何というのですか?」
「名前は北見健吾です。要件というのは以前、働いていた会社でパワハラを受けた人がいるんですけど、会社は証拠もあるのに黙認をしたんです。そのことについて調べてほしいんです。」
助けを求める行為に何処か彼らは冷めてしまった。