始まりというべきもの
奏斗は力強い目をしていたのを見てほっとした。宗には持ち合わせていなかったものを今、彼はもっているのだと思ったのだ。戦うなんて無駄なことだとも思ったこともあったのだ。
「奏斗が知っているカフェってどの辺だ?」
「このあたりですよ。チェーン店に行くのもいいですけど、個人営業の喫茶店もいいですよ。豆にこだわっていて焙煎やら全てにおいて妥協のない感じが・・・。」
奏斗がそういって細い路地に入っていった。そこにはビルの隙間にはまったような感じになってしまっている。そこを少し歩くと喫茶店らしきものを見つけた。派手な門構えをしているわけでもないのに、何処か凛としているように思えた。
「入りましょう。」
「そうだな。」
入ってみると古い構造を残す感じで柱がいい役割をしているのを感じ取ることができたのだ。ドアを開けてもなおマスターはコーヒーにいそしんでいる感じがした。
「いっらしゃい。」
「マスター、何時ものコーヒーのブレンドを2つください。・・・あと、付け合わせにおすすめのケーキがあったらそれも。」
「わかったよ。奏斗君のことだからケーキがいるってわかっていたよ。まぁ、用意するから適当に座っておいてよ。」
マスターは彼の言葉に応えるように静かに答えた。彼が好きな席は窓際の人通りを見ることができるような場所だった。テーブル席としてあるのだが、カウンターに座っているとどうもパソコンに向き合っているときに似ている感じがしてあまり座らないのだという。
「俺は幼いころにプログラミングを始めたんですよ。親から遊びをするのに最も楽しい場所があるからって言われたんです。」
「そこがプログラミング教室だったっていうわけか。」
「そうです。最初はさっぱりわからないまま、パソコンを操作していました。けど、何処からか楽しくなっていたんです。そこで作ったサイトを見て教室の先生がちょうどコンテストがあるから全員分を出してみてはどうかといったんです。」
最初に作ったものを記念にコンテストに出すことに何かにつながればと思ったのかもしれない。そこで奏斗の作ったサイトが優秀賞を取ったのだ。最初はそれで喜んでいたのだ。遊びで作ったものが認められたと思ったからだ。
「俺はそれからずっと通ってはアプリを作ったりしていたんです。コンテストに出しては優秀賞なりもらっていればよかったんですよ。作っている時間が好きだっただけですから。」
その教室では特段、課題が上がってくるわけではなかったのだ。好きなものを作るために必要なものを知っていく感覚だったのだ。それがのちに早めに会社に入る結末になるのだが・・・。




