先の見えない地図
携帯がかからないというのはめったにないのだと白浪から聞いていた。それは弁護士とつながりがあるという風に見せておけば、相手もひるんで無茶な要求をしないからだといっていたそうだ。林に関しての連絡にしてもしかりだという。それなのに、携帯に出ないうえに何処ぞの事務所の内定をもらっても望んでいないので困ったことになるのだ。白浪によると内定の下の記述には今まで通りの条件で引き受けるとまで書かれてあったのだ
「今から宗を探そうと思っています。けど、探すだけではダメだということも分かっています。・・・力を貸してください。」
「力を貸すに決まっているでしょう。待っていてください。そっちに向かいます。」
村上にはこれは笹田が最初から決めていたことだとしたら時間との闘いになってしまうと思った。応接室に彼は勢いで戻った。尚子もまた、村上と同じ気持ちだとわかっているからだ。
「所長、あいつ・・・死ぬつもりかもしれません。」
「・・・居場所の検討はついているの?」
「いえ、とりあえず事務所に向かって白浪さんと林さんの力を借りて探します。」
彼の力のある声は何処か焦りすらもかき消してしまうくらいだった。きっと父親にも言っていないのだろう。だから、養護施設に顔を出さないということにつながってくるのだ。
「あの子は・・・、失うことにすがっているように見えてならなかったの。」
尚子の言葉が寂しそうにつぶやいていた。




