此処で立つ
小さな事務所で何処かかけ離れたと思われてしまう部分があるのかもしれないが、当人たちは全く思っていないのだ。
「なぁ、宗。次の裁判に勝ったらどうするんだ?」
「どうするも何も積み立てと3人で割るで済むだろう。まぁ、依頼人の金額を抜いての話だけどな。」
着ている服は何処か私服でぱっちりとした黒メガネをかけている男性が私服で何処か何も考えていないように見える人にいったのだ。その事務所には何時も探偵に依頼するような内容と弁護士に依頼する内容が混ざり合ってしまうのだ。それでも慣れてしまっていることもあってか、苦に思うことはなかった。笹田宗は探偵事務所のほうの所長という立ち位置になっている。
「それより龍哉はどうなんだよ。勝てそうな感じなのか。」
「まぁ、何処かの大手の事務所とかいっても俺の経歴を見てか、立ち向かっているようなんだけどな。あまり情報が集まらないとかなんかいってさ。裁判を伸ばそうとか言っているほどなんだよ。パラリーガルも協力的じゃないことで有名な事務所だからしょうがないさ。」
白浪龍哉は弁護士としての経歴をもっており、弁護士事務所の所長という立ち位置になっている。弁護士と探偵がいる事務所であることから知った人から珍しい事務所だとして見られているが、宗と龍哉は高校の時の同級生でその延長戦でやっているようにしか思っていないのだ。それに龍哉は以前は入ったらうらやむほどの弁護士事務所に在籍をしていたのだが、それをやめて此処にいることに不思議がられることは少なくない。宗もまた大手の探偵事務所を渡り歩いていたということもあって入ってきてほしいという人は現れてくるが全て、断っているのが事実だ。
「もともと此処の探偵事務所で浮かび上がった案件を裁判にもっていている時点で勝てそうもない裁判だから受けたがらない弁護士のほうが多いんだよ。探偵というのは情報とかに重きを置くからデータの面で勝てない。だからそれを崩そうと思って時系列で戦うんだよ。それを埋めるように俺が組み立てるから余計に勝てないというわけだ。」
彼は少しずり下がった眼鏡を見せつけるように上げた。彼は弁護士になることが夢であったのをかなえたが、有名な弁護士事務所にいたときには事務所が最初に選別してしまうことを知って、自分のためにと裁判を受けることを許可してくれないが、宗とともにいることで特段勝てようが勝てまいととやかく言わないこともあってか、此処にいるのだ。