告げるべきこと
明光がそのことを語らなかったのは一体何があったのだろうか。そこを知ることで分かることがあるのではないかと思ってしまった。
「俺、少し調べたいことがあります。」
「いいわよ。別に貴方には特段、相棒なんていらないでしょ。経験もいやというほど積んでいるのに、何も言うことはないと思っているの。」
「有難うございます。」
村上にとっては尚子に認めてもらえることが如何にうれしいことか。最初に入ったときには社会から求められていないのではと考えていたのだ。そこでも手を差し伸べてもらえることのうれしさを知ったのだった。部屋を出るためにドアの近くに行くとふと彼女は告げた。
「まぁ、気が向いたら報告してね。そのことによって動きがわかるから。」
「わかりました。」
村上は意気揚々とビルを出た。彼はそうは言ってみたものの何処から取り掛かればいいかがわからなかった。情報があまりにも少ないのだ。笹田明光の友人が事件に巻き込まれてしまったということしかわからない。明光が刑事になった理由と宗が探偵を選んだ理由が交わったときにわかることがある。彼は即座に警察官の知り合いに電話を掛けた。その人ならわかるかもしれないのだ。かつて、笹田明光の相棒をしていたと話していたことがあったのだ。




