濡らしたもの
下手な動きを好まないことを知っているのだろうか、彼女の言葉に少しばかり詰まってしまった。安易に答えるのはお粗末な結果を招くことがあるのは知っているのだ。
「まぁ、考えておいてくれないか?」
「わかりました。私の腕はプログラミングを習っていたとしても、彼には及びません。それは事実です。彼の裁判例を見たのは巻き込まれたときようにと思っていただけです。それでも手の内を明かしていないのでできる限りとしか言えないです。・・・所長には伝えてくれますよね?」
「あぁ、無茶を言っているのは百も承知だからな。」
彼女はそういうと取り掛かるためにプログラミング用にしている画面になった。悪しからず、腕は落ちていないのだろうから。尚子はきっと部下の後始末にてこずっているのか、なかなか現れないようだった。村上は所長室に入って大学ノートを読んだ。
轟は公安であったことを誇りに思っているわけでもなさそうだった。厄介なことに巻き込まれたとしか思えなかったのだろう。だが、仲間が殺されたことで変わったのだろう。殺した相手が同じ警察だと知ったときには怒りしかなかったのではないか。嘘で塗り固めようとする姿を見てしまって上に抗議をしたのだという。組織のためという意味の分からない言い訳を言い出したのだろう。あまりに上司に抵抗するので、公安から外されてしまったのだ。そこからいった先が捜査二課だったのだ。彼にとっては場所なんて関係なかったのだ。




