悟られた闇
「うちの事務所で彼と対抗できる人って限られてくるってことですね。」
「そもそもいるように見えて所長ですら危ういと思っているんだよ。探りはうまいからな。」
村上は彼女に吐露する姿はあまり見せていなかったのかもしれないと心底思ってしまった。彼女が入ってきたときにはパソコンが好きな人くらいにしか思ってかかわっていなかったのかもしれない。根底にあることはあまり変わらないのだろうと。もしかすると、林奏斗に匹敵するくらいのプログラミングをもっているのかもしれない。
「難しかったら難しいって言ってほしいんだけど・・・。」
「なんですか?」
「白笹法律探偵事務所のパソコンに入り込めないか。どちらかというと林奏斗のパソコンなんだが・・・。」
彼女は村上の発言に口をあんぐりと開けてしまった。挑む相手が違うというのだろうかと思ってしまったのだ。幼いころにプログラミングの天才といわれていた人物に鎧もせずに挑むのは不可能だろうが、鎧を付けたとしても負けてしまうのだろうか。
「私の腕は林さんにはかないません。それだけは言えます。彼のプログラミングは隙を見せないように防除と攻撃のバランスがいいんです。そのことを裁判で知ったんです。」
「じゃあ無理ということか?」
「一応鎧はつけるつもりですが・・・。そんなことをしたら笹田さんに悟られないですか?」
村上にしたら百も承知の上のかけのようなものに過ぎないのだ。ばれたとしても契約は解除されないのは何となくわかっている。彼には情というものを持っている。




