データの旅
彼女の言葉からはあまり聞かないような重苦しい空気が漂っているようだった。そこからは感じ取れるだけじゃないことに埋もれてしまうことが嫌になってしまう。応接室から出た後は、所定の位置にある村上の机に向かった。なれたことをしなかったからだろうか、疲れがどっと来てしまったのだ。なだれ込むように回転いすに座った。椅子の動きに対応できなくなってコロコロと転がっていってしまった。
「村上さん、遊んでいるんですか?」
パソコンに向き合っているだけかと思ったがそのあたりはちゃんとしていた。彼女はプログラミングを習っていたそうだが、その世界では輝くことはなかったのだ。憧ればかりが募ってしまった気がしたらしい。ならば、インターネットを取り扱う会社に行けばよかったのではないかと思ったりしたがそういうことではないらしい。彼女曰く自力で解決することに意味があるのだといったのだ。そんな話を聞いたのはどれくらいたったのかはすっかり忘れてしまった。
「違うよ。どうせ笹田と何か話していたんだろ。」
「そうですね・・・。彼なり感づいているみたいです。此処の依頼者に林奏斗か白浪龍哉はいなかったかと聞いてきましたよ。」
「伊達に探偵事務所の所長をしているわけじゃないだな。」
彼女は言わないほうがいいと思ったのか、答えなかったといった。探りをかけるのがうまいと思ってしまったのだ。思わず答えてしまいそうなくらい気軽に聞いてくるので気を付けていないとダメな存在だと思ったらしい。
「笹田はもともと此処で働いていたんだよ。誤認逮捕があってやめてそこから違う探偵事務所に入って転々として腕を磨いたとか言っていたけど、もともと身辺調査をするくらいの腕は持ち合わせているんだよ。」
「そうなんですね。」
彼女は黙ってしまいそうな口で答えた。




