見えぬ矢先
尚子の行動力には何処か頭が下がってしまう。何処から湧き出てくるのかとも思ってしまってしまうのだ。それはきっと検事の後悔が月が回るように取りついているのだろうと思ってしまうのだ。
「今日は難しいみたい。なんだか、知り合いの暴力団か何かが問題を起こしたとかで警察に追われているだの言っているのよ。まぁ、その騒動に関係ないんだけど・・・。」
とりあえず言えるのは今は無理だということくらいだろう。だが、何もないわけじゃない。手にあるのは大学ノートに記された大切なデータとも言えてしまう。
「しょうがないですね。俺は別段大きな用事もないですから、それでも読んでおきます。」
「そうね。・・・まぁ、部下のことは忘れたふりでもしていて構わないから。私が出るようじゃとてもじゃないけど無理そうなのよね。」
部下といっている人たちは何処か逃げ場所を求めてやめるためには独立とぼやいているが、到底そこまでに達してないことを理解したのだろう。限界なんてありもしないことに切りをつけることの安易さは以前から知っていたから。そう思って眺めていた。
「あとのことは任せてくれていいわ。しょうがないから私が向かうから。」
彼女はしょうがないことには嗚呼言ってしまうのだ。変わらないことはないからだ。無邪気な気持ちなどいつしか忘れてしまうものだと知ってしまった。




