表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
172/242

沈んでいく町

突然、ドアをノックしている音が聞こえた。明らかに音の主がわかっているのか、宗は素知らぬふりをしていた。相手は何処かそれすらも分かっているのかそっとドアを開けた。

「やっぱり所長か。」

「やっぱりってどういう意味よ。・・・1つ忠告しようと思ってきたのよ。」

「村上にか?」

彼には該当しないかのような関係ないような口調を張り付けていた。そこに生まれていくものがあるのだろうかと思った。尚子の手には大学ノートがあった。読んでいた最中だったものだが、調べていた張本人が表れたとなると問いただす人は限られてゆくというわけだ。

「違うわよ。貴方よ。笹田君。」

「それはあれか。親父を悲しませるようなことをするってか。わかっているよ。」

「それもあるけど、貴方があえて選んでいる道が荒野にしか見えないの。それは開拓しているつもりなのかどうなのかは知らないけれど危ない道だって言っているの。あの時もそうだった。わかっていて落ちたっていうのはいけないから。」

彼女には何処か笹田から預かっているつもりがあるのだろうか。ぬぐい切れない何かにあらがうことは容易ではないのだろうから。嘘に染まることもよくないが、真実をたどり続けたあまり見えなくなってしまっても困るのだ。正義を振りかざして見えなくなってしまっては何もつながらないのだ。正義すら振りかざすことのない人間も多いわけだが・・・。偽善すら持たなくなるっていうのも問題になってしまうのだが・・・。

「親父はうすうすわかっているよ。増岡について調べていたことも。あの人は元警視庁捜査一課の刑事だからな。」

「だからこそよ。貴方が選ぶ手段にも問題があるの。」

尚子は検事だったときにあらがうことができなかったことの後悔があるのだ。生まれては沈んでいるものを眺めることは簡単じゃないということだ。新しい情報にも戦う価値を見出せることも大切なのだと思ってしまうのだ。彼女の言葉は重くなってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ