行方なき旅人
宗によると田沢は村上に似たようなところがあるらしい。田沢にあったときにはいっていたような気がした。
「新聞記者にあこがれていたらしいんだけど、まぁコネとかもある世界だからダメだったみたいなんだよ。泣く泣く週刊誌の記者の募集を見つけたからそこに応募をしたに過ぎないんだ。」
「それから記者として動いているのか?」
「まぁな。・・・俺が田沢を見つけたのは小さな記事しか書いてなかったな。それで何度か読んでいくうちにいい記事も書くし、腕もあるからどうだと声をかけたんだよ。ちょうど、データを明け渡して使えなくしたバカがいたばっかりに。」
それをしたのは別の週刊誌の記者だったらしい。エースといわれる人にどうしていいネタをつかましてもらえるのかと問われて黙っていられずしゃべってしまったが故に取られてしまったのだ。ただ、細工をしていたこともあってデータすら見れなくなってしまった。その人は何を思ったのか、宗に会いに来たらしい。データが見れなかったと。
「だから言ったんだよ。お前コネ入社だろって。腕もろくにないのに、一面を張れるのは親の力だとわからないのかってな。そいついったんだよ。知ったこっちゃないって、これで社会が回っているんだから。データをもらうのは当然だと。」
宗はそんな彼を突き返した。そのうえでその週刊誌にはデータを提供しないことを書いた文章を当てて終わったのだ。彼が余計な言葉がなければというよりかはデータを奪ったという理解がなかったのだ。そこで得られたデータが無駄になることはないのだが・・・。
「のちに解雇になったという話だよ。そりゃ会社の金で買ったデータをおじゃんにしたんだ。金になるから出したのに無駄になった故に取引相手にケンカを売ったとしたら無理だろうな。」
ケンカを売った彼の行方は知らずといったところだろうか。




