冷たい翼
笹田には恐らく何処かのタイミングですべての真相が見えているのだろう。それを隠すのは脅されるべき相手だけとは限らないのだ。
「轟君は失態を経て捜査二課に配属をされたんだとしたら、きっと国会議員に顔を見られていなかったと考えるべきよ。見られてばれたら二課で突入なんてできっこないんだから。」
ノートには轟は公安の同期が殺されたことによって残された遺族に尽力したいと言い出したのだという。公安というところは何処かでいなくなったような感じになってしまうのだ。だったら、公安ではなくて、警視庁に配属にしてほしいと上司に掛け合ったという。上司にとっては轟に残ってほしかったとも書かれてあった。今は情報屋とかいう裏社会に精通するようなことをしているが、それでも警察が動けないのは彼が持っている情報が警察にとっては不利なのだ。捜査二課に所属になったときには過去に警察学校にいたとしか告げなかったのだと書かれてあった。
「轟さんはその同期の死んだ姿を見てしまったってことですよね。じゃなきゃ、遺族に尽力なんて思わないはずです。」
その人の月命日には欠かさず墓参りに行っているのだろう。そうなれば、遺族にも会うだろう。警察が隠している事実を伝えないはずがないのだ。そこで生まれるのは組織が隠した嘘には何も生まれないという単純でなおかつ権力を持つ人間が安易に忘れてしまうことに過ぎないのだろうから。結局、組織のためという胡散臭いおまじないを唱えている子供のような感じにしか思えないのだ。




