地獄絵図
いずれにしても轟はその時は交番勤務だったはずだ。大体は警察というのは交番勤務を始まりとなっている。笹田が探ったであろうとノートにもキチンと交番勤務の履歴があった。そこでの成績が買われたのだろうか。公安にいたということは・・・。
「公安にいたら警察署内にはいないのと同然だからね。情報が漏れたらおしまいだから。・・・確か、数年前公安が失敗したみたいな記事を見たことがあるわ。」
彼女は新聞の切り抜きを置いているファイルを探し始めた。そこには新聞だけでなく、ネットニュースもコピーされているという話だ。彼女が検事だったことがよくわかるのだ。そこでは生まれないものを見つけようとしているのだろう。尚子は探していたものを見つけたようだった。
「そうそう、確か国会議員のペーパーカンパニーを探るために入った公安が殺されたのよ。名前は載っていないけれど、一時殺した相手が刑事だなんて噂になったのよ。それもそんなにときを絶たずに消えてしまったのよ。不自然だとしか思えなかったから。」
「そこに増岡勉がかかわっていると思いますか?」
「あり得るわよ。だって私、その時バカな親父の心配したんだから。まぁ、今はそんなことは思わないんだけどね。だってそうじゃない。自分の地位のために子供を小道具にするなんてありえないわ。」
増岡勉は区議会議員どまりだが、息子は国会議員になって総理大臣まで務めたとなると。その裏に見返りの末と考えるのが普通だろう。恐らく殺された公安は知られてはならないデータを得たのかもしれない。そこでばれてしまったことで警察は手も足も出すことができず、ただ聞くことにしたのかもしれないのだ。つながっていないように見えた構図はつながりを見せてきた。
「そこにあいつの誤認逮捕か・・・。」
「だから、轟君を調べたりしているうちにある程度の真相を知っていると思ったほうがよさそうね。」
村上は手ごわい相手に苦戦する絵しか思わなかった。




