ビルの日
「あいつは仕事柄大きな案件だろうと事務所を好むんですよ。だから、こういうところを知っているのはよかったと思ってます。・・・まぁ、くだらない話はさせおいて宗がどうして弁護士事務所に行っていたかわかりましたか?」
「そのことね。確か下のスナックの娘さんが見たらしいのよ。春香ちゃんだっけ。」
「そうです。」
店員はコーヒーを置きづらそうにしてテーブルに置いた。そそくさとまずい話を聞かされると思っていたのだろう。村上は届いてすぐにコーヒーを一口飲んだ。あまりにも口が乾ききってしまったからだ。
「私も探っている最中だけど弁護士事務所のほうは口を開かないじゃない。性質上ってもので・・・。だからプログラミング会社っていうかIT企業に鎌をかけてみたらぼろを出した会社があったわ。」
「奏斗と俺ということは事務所を閉めるつもりなんですかね。」
「なんとも言えないのよ。笹田自体があまり口を割るタイプじゃあるまいし・・・。この様子だと村上にも何も言っていないみたいね。」
彼はその場に居心地の悪さはなかったが、何も生まれていなかったのだ。宗は何かを企んでいるようだということだ。外からしか眺めることのできないビルの中にもいるようだった。




