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動いた時代

笹田は明光との思い出に浸っていた。浸っていたとしても明光がくれたのは何処か不器用でやさしさを感じることができるのだった。村上に連れられたカフェは大きな場所ではないが、多くの人が座っていた。

「此処は前に依頼を受けたことがあるんだ。確か・・・店主を務めている息子が詐欺をやっているだのなんだかんだ言って調べたけど全くなかったんだ。サプライズをしようとしてバレぬようにして親から疑われたっていうだけだったんだ。くだらなかったさ。」

村上は店員に案内された席へと向かった。その場所は壁に張り付くようになっていてセキュリティーの面も含めてのことだろうと思った。コーヒーを頼むと村上は疲れ切った顔を見せた。

「野暮用は嫌いなんだよ。ろくでもない事件に巻き込まれている気がしてさ。・・・まぁ、いいんだよ。所長の決断もあるんだろうし、それにお前が戻ってくれば俺はいいところに行くのになぁ・・・。」

まるで望みをかなえてくれるといっているところなのだろうかと思ったのだ。周りはやけに騒がしくなっている気がしたが放っておいた。くだらないことでかかわったら探偵だとばれてろくな事にならないのは承知の上だ。

「明光さんと会っているのか?」

「親父とか。」

「そうだよ。養子なんだからというよりは家族なんだからと思ってな。」

明光は刑事をやめて養護施設の職員として働いた後も養護施設で働くボランティアになっていたが、歳との兼ね合いでやめてしまった。それでも時々顔を出しているのだと明光自身から聞いたのだ。

「会っているさ。あの人は優しいからな。元より親だからというよりは何だろうな・・・。簡単に言えないんだよな。刑事としての正義感を感じてしまったとしてもそれ以上のものを感じてしまうんだよ。親父は確か警視庁の捜査一課にいてなおエリートの道も進んでいたらしいんだよ。それをかき消してしまうほどの事件があったとも聞いたことがあるんだ。」

明光のことを尋ねたことがあった。彼は毎回毎回照れ臭そうにいっていたのだ。全ての刑事がそうでないことは聞いて知っていたが、明光のやさしさが本物であると幼いながらに思っていたのだ。明光は幼いころかあこがれていた警察官になったのだろう。だが、何処かで絶望を感じてしまったのかもしれない。それによって早めに刑事をやめてしまって養護施設の職員といった異例の経緯をたどっているのだろうと今更ながらに思ってしまうしかなかったのだ。

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