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組織の素質

村上は翁助の表情が何処か晴れやかになってくれればと少しの救いを生むのではないのかと思ったのだ。悪しからず彼らにも代償が生じるのはやむを得ないと。

「有難うございます。キチンと貴方のお父さんに責任を問わないといけないですね。」

「そうですよね。姉貴はきっと何処かでそれを望んだからこそ、弁護士にならず、探偵という仕事を選んだと思ったんです。心の何処かで弁護士になりたかったんだと思います。正義感が強くて幼いころから憧れを抱いていましたから。」

翁助にとっては姉の尚子は誇りだったのだ。きっと先に行くことが全てでは思っていなかったからこそ、翁助も立派な人と思っていたのだろう。心の中で雨が降り続いているのだろう。それもこれで晴れていくことを期待するしかない。

「篠原も巻き込んで悪かったな。」

「いいんですよ。俺も弱かったんですから。子供を守れなかったのは罰だとしか思っていないです。妻もわかってくれています。何時かこんな時が来るのを待っていていました。」

彼の言葉は救いなのだろうか。時の流れには逆らえないのだから時間が解決してくれると思っていたのだろうか。宗は篠原と翁助を見つめてるしかなかった。

「なんだかんだ言って無力ですね。」

「違いますよ。警察にいってもグルだから動いてくれるわけでもないですし、叫んだとしても殺されたとしても何も理解をしてくれないんですよ。だから、無力じゃないんです。」

篠原はそういって答えた。その答えを求めたわけでもなかった。探偵という仕事は何処かで歯車を狂わす可能性を含ませた厄介な仕事に過ぎないのは始めたときはわからなかった。でも、宗は誤認逮捕をされたことを受けて警察は何もしてくれないし、決めつけて人生を狂わせたとしても大した謝罪もなかったのだ。ただ作業をしていただけに過ぎないのだから仕方ないといわんばかりの顔をして平謝りをしてくる。組織を守っているつもりだろうがむしろ壊す恐ればかりをしているのだ。

「データをもらいます。長い間いて申し訳ないです。」

「いえいえ。俺はこの話を姉貴と篠原くらいしかできなかったんです。川城一家に生まれたからだとばかり思っていました。宿命だなんて大それた考え方をしていたわけでもなかったんです。居場所を探すのが面倒くさいだけだったのかもしれません。」

彼の顔は吹っ切れた顔をしていた。尚子が翁助に見せた探偵という仕事を示したかったのかもしれない。

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